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人工知能(AI)の導入を目指す企業の多くが忘れていることがある。AIモデルの検討そのものには膨大な時間とリソースを投じながら、それを既存システムとどう連携させるかまでは考えていないのだ。その結果、希望に満ちたAIプロジェクトは突然、終わりを迎える。こうした事態を避けるには、当初から連携まで見据え、必要なスキルと知識を有する人材を集めて、適切なチームを編成することが不可欠である。


 人工知能(AI)の導入を目指す企業がどんなふうに失敗するのかを示す、次のような話がよくある。

 それらの企業は有望な技術ベンダーと緊密に協働する。概念実証で確かな成果を上げるために、必要な時間、金、労力を注ぎ、AIの活用が自社の事業をいかに向上させるのかを立証して見せる。

 その後、すべてが突然、中止される。気づけば会社は袋小路で行き詰まっており、概念実証の素晴らしい成果はお蔵入りとなり、担当チームは失望させられる――。

 この残念な結末の理由は何だろうか。実は、AIのモデルを全社的な技術アーキテクチャに統合することは、一筋縄ではいかない――というより、相当に難しいのだ。

 これを実現するには、新規テクノロジーを大規模なITシステムとインフラに正しく組み込むことが求められる。一流のAIでも、自社の既存のシステムと連携できなければ何の役にも立たない。

 しかし企業は、AIモデルそのものの検討には時間とリソースを注ぎながらも、それを実際に既存のシステムと連携させる方法については考慮していない場合が多いのだ。

 ここで欠けているのは、AIのオペレーション――略して「AIOps(エーアイオプス)」である。これは、AIモデルが生み出す結果をエンドユーザーにとって望ましい洞察へと変えるために、システムの構築、統合、テスト、リリース、展開、管理を行う手法を指す。

 AIOpsとは突き詰めて言えば、適切なハードウェアとソフトウェアだけでなく、適切なチームを持つことである。すなわち、AIを会社の既存のプロセスとシステムに統合するためのスキルと知識を備えた、開発者とエンジニアだ。

 ソフトウェア・エンジニアリングにおける開発と運用を統合するための手法(DevOps)から発展したAIOpsは、AIエンジンの働きを実際の製品・サービスに変換し、大規模かつ安定したAI運用を実現するうえでカギとなる。