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職場で日常的に上司から脅されたり、侮辱的な発言を受けたりして、多くの人が苦しんでいる。リーダーのそうした振る舞いを容認していると、会社全体に虐待行為が蔓延し、組織のパフォーマンスを大きく低下させる。虐待をやめさせて有害な職場を変えるために、企業は何をすべきなのか。


 何百万という人が、職場で暴力的な上司やいじめに直面している。日常的に上司から嘲笑され、脅迫され、侮辱的な発言を受け、その結果、満足度や生産性が低下し、組織全体だけでなく仕事に対するコミットメントも低下してしまう。

「悪い上司」との直接的なやり取りは従業員にとってトラウマになりうるが、多くの場合、それは個人の問題にとどまらない。虐待的な行動を特にリーダーがやると、それが組織全体に広がり虐待の風潮を生むことが、私の研究で明らかになっている。

 従業員はマネジャーを頼りにし、マネジャーから学ぶので、この種の対人的な虐待がこの会社では許されると捉えるようになる。「ここではこのやり方なのだ」という従業員の考え方自体が、虐待行為を容認する有毒な環境に現れる。さらに、上司からの虐待を経験した従業員は、連鎖反応としてそうした扱い方を「受け継ぐ」傾向があることも、研究で示されている。

 このように、有害な職場は甚大な被害をもたらし、チームや個人にも損害を与える。たとえば、私が同僚と行った複数の研究では、虐待的な風潮がチームの集団的効力感に悪影響を及ぼすことがわかった。これは、チームが任務を適切に遂行する自信を失っていることを示唆している。

 さらに、虐待的な職場環境は、チームメンバー間の重要な結束を破壊するため、パフォーマンスが低下して、組織市民行動が減少する。従業員が互いに支え合わなくなるのだ。

 有害な職場はまた、仕事だけでなく個人の生活も損なう。従業員は精神的に疲弊し、ウェルビーイングが低下し、さらには家庭での葛藤(仕事と家庭のバランスの葛藤など)が増す。

 虐待的な上司がもたらす有害な結果を考えると、彼らの行動を変えるために何ができるのかが問題だ。