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目標と実績は
なぜ乖離してしまうのか
たいていの企業が、積極果敢な成長計画を掲げている。しかし、クリス・ズックとジェームズ・アレンは1988年から98年にかけて、全世界の大企業1854社を対象に調査を実施し、8社のうち7社が利益増を実現できなかったと報告している[注1]。
すなわち、ハードル・レートとしてはいささか控えめな資本コストを稼ぎ出すことはできたものの、総売上げ、総利益ともに実質成長5.5%を達成できなかったということである。綿密な戦略とは裏腹に、調査対象企業の9割が現実をはるかに超える目標を掲げていたのだ。
なぜ目標と実績との間に、このような隔たりが生じるのだろうか。その原因は、ほとんどの企業において、戦略の立案と実行がリンクしていないことにあると我々は見ている。事実、我々が調査したところ、平均95%の社員が自社の戦略を認識あるいは理解していないことが判明した。
顧客の最も近いところにいて、価値創造に携わっている社員が戦略を正しく認識できていないとすると、組織の一員として、戦略を効果的に実践することなど望むべくもない。この状況は改善されなければならない。
我々は過去15年間、バランス・スコアカード(BSC)を導入することによって業績を躍進させた企業を考察してきた[注2]。BSCには戦略マップなどの関連ツールがあり、戦略の浸透を促し、実践指導と進捗状況の管理を支援する。
もちろん、業績を平均以上に、しかも長期的に改善し続けている企業もある。社員たちの意識にたえず戦略を訴えかけている企業を見ると、戦略に関わる活動全般を全社的に管理する新しい組織、いわゆる「戦略管理オフィス」(OSM: office of strategy management)を創設したところが、少なくない。
これは、経営企画部門や社長室を呼び換えただけにすぎないと思われるかもしれない。しかし、両者はかなり違う。これまでの経営企画部門は戦略の立案を担い、そのプロセスを円滑化するためのものだったが、当の戦略が確実に実践されているかどうかを監視する権限は、ほとんどあるいはまったくなかった。
我々が調査した企業は、戦略を効果的に実践するには戦略を正しく伝達することが不可欠であると認識している。つまり、全社戦略をさまざまな部門の計画のみならず、戦略イニシアティブをも反映させると同時に、社員の研修プログラム、個人の目標およびインセンティブを戦略目標に合致させることが大切なのだ。さらに、戦略が競争環境の変化に遅れないように常時検証し、調整する必要もある。