コロナ後も在宅勤務を続ける中で
見えてきた課題とは何か

編集部(以下色文字):今年(2020年)春、国内従業員約3万1000人に対して、在宅勤務を継続する方針を掲げました。具体的には、2021年度以降も週2~3日、勤務日の50%において在宅を続けるもので、伝統企業として新しい雇用形態を目指すメッセージをいち早く出しました。なぜ在宅勤務を推進するのでしょうか。

東原 敏昭(ひがしはら・としあき)
1955年、徳島県生まれ。1977年徳島大学工学部卒業後、日立製作所入社。2007年に執行役常務。日立パワーヨーロッパ社プレジデント、日立プラントテクノロジー社長などを経て、2013年に執行役専務、2014年に取締役 代表執行役 執行役社長兼COO。2016年から現職。米ボストン大学大学院コンピュータサイエンス学科を修了。

東原(以下略):社員にとって、非常に大きなメリットがあると考えているからです。いつ働いても、どこで働いても自由である「タイム・アンド・ロケーションフリー」は、我々の目指す働き方です。リモートワークの環境さえ整えれば、通勤時間帯のラッシュをかいくぐってまで会社に来なくてよくなります。働き方をより工夫することで、仕事の効率が高まるのではないか、そう思うのです。実際に国内社員にアンケートを取ると、「在宅勤務を継続したい」との回答が、およそ50%になりました。

 一方で、課題も見えてきました。ピーク時で国内の7割超、9月時点でも過半数の社員がリモートで働いていますが、その不自由さも明らかになりました。大きく3つあります。一つが、ITインフラの問題です。通信速度やプリンターの配備等、自宅のIT環境の整備がまだまだ行き届いていません。次に決裁です。これは日本特有ですが、ハンコ文化がまだ残っています。最後が働く場所です。自宅で働くための部屋が整っていない家庭があります。