次世代アプリにより
全社でのイノベーションが可能に

 このようなクラウド上のAIサービスは、新しいタイプのエンタープライズアプリの開発に道を開くだろう。

 それは、既存のアプリよりも「生成的」、つまり創造性が高いものだ。そのようなアプリにより、これまでより安価に、言葉や意図、情報をつくり出せるようになる。その結果、多くの企業活動の効率性が高まり、アーリーアダプター企業に匹敵するイノベーションと成長が加速する。

 私たちが50以上のビジネス関連のGPT-3の概念実証(デモンストレーション)を分析したところ、未来の最先端のビジネスアプリは、少なくとも3つの創造的活動のカテゴリーに分類でき、すべてが言語理解に関係する。文章作成、コーディング、そして個々の分野固有の推論である。

 いくつかの簡単な手掛かりに基づいて、場合によってはたった1つのセンテンスに基づいて、意味を成す文章を生成するGPT-3の能力は、時に薄気味悪く感じられることすらある。

 たとえば、GPT-3の非公開ベータ版を試用した人物の一人は、それを使って、ビットコインに関する説得力あるブログを執筆した。我々が分析したデモンストレーションの中には、新しいポッドキャストをつくったり、メールや広告キャンペーンを作成したり、取締役会の運営方法を提案したり、既存の言語システムではうまく対応できないような問いに対して知的な返答をできたりするアプリも含まれていた。

 GPT-3は、人間から与えられた手掛かりに基づいて、コーディングも行える。コンピュータやシステムへの指示を記述できるのだ。

 それだけにとどまらず、自然言語をプログラミング言語に転換することもできる。具体的には、コンピュータに実行させたいこと(たとえば、社内向けのウェブサイトや顧客向けのウェブサイトを作成する)を、英語やスペイン語、ドイツ語といった自然言語で描写すると、AIがそのためのプログラムを書いてくれるのだ。

 また、GPT-3は、特定の科学や技術の分野におけるコンテンツ、手順、知識について考えることができるので、ほかにも極めて有益な用途がありそうだ。たとえば、化学に関する問いにも答えられる。あるデモンストレーションでは、6つの燃焼反応のうちの5つを正確に言い当てた。

 別のデモンストレーションでは、言葉による描写に基づいてグラフを自動生成することに成功している。これが実用化されれば、プレゼンの準備をする際などに、面倒な作業をかなり減らすことができる。ベータ版を使って、会計の専門知識を持たない人が財務諸表を作成するのを助けるボットをつくった人物もいる。

 別の人物がつくったアプリは、意図的に難易度を高くした医学上の問いに正しく回答し、根底にある生物学的メカニズムを論じることができる。

 具体的には、そのアプリに10歳の男の子の呼吸器に関する症状を示し、その子どもが閉塞性呼吸器疾患と診断されて、投薬治療を受けたという情報を与えた。そのうえで、「治療に使われた薬品はどの受容体に作用する可能性が高いと思うか」という問いに答えさせた。

 すると、プログラムはこの問いに対して正しい回答を導き出し、その子どもが喘息を患っていて、一般的にはその受容体に作用する気管支拡張薬で治療されることを指摘できた。