Mr Pickles/Getty Images

AIによるレコメンド機能の精度が上がり、消費者の潜在ニーズにより的確に応えることが期待される。しかし、最新のテクノロジーを導入しても、それが効果を上げるとは限らない。筆者らの研究では、消費者が実用的価値を期待する場合はAIによる推薦が、情緒的価値を期待する場合は人間による推薦が有効だと判明した。


 機械学習や自然言語処理など、人工知能(AI)分野における新しいテクノロジーを活用して、消費者に対して、素早く的確に商品やサービスを推薦するサービスを導入する企業が増え続けている。

 アマゾン・ドットコムやネットフリックス、さらには不動産仲介業のレックス・リアルエステート・エクスチェンジにいたるまで、さまざまな企業がAIによるレコメンドサービスを通じて顧客体験を向上させようとしている。

 最近は公共部門でも、こうした機能を活用して、利用者が必要なサービスにたどりつきやすくしている。たとえば、ニューヨーク市社会サービス局は、AIを利用して、市民に障がい者手当、食料支援、医療保険などを案内している。

 しかし、AIによる推薦機能を導入しただけで、常にユーザーに商品やサービスの購入を促せるとは限らない。AIによる推奨が効果的な場合もあれば、まったくの逆効果に終わる場合もある。

 消費者が機械による提案を信用するケースと、拒絶するケースの違いはどこにあるのか。筆者らの研究によると、そのカギを握るのは、消費者がプロダクトの機能的・実利的側面(実用的価値)に目を向けているか、それとも経験的・感覚的側面(情緒的価値)に目を向けているかという点のようだ。

 筆者らはこの点に関して、3000人以上を対象に行った10件の実験結果をまとめた論文を『ジャーナル・オブ・マーケティング』誌に寄稿した。その論文では、エビデンス(科学的根拠)に基づいて、ワード・オブ・マウス(口コミ)ならぬ、「ワード・オブ・マシン(機械の言葉)」効果――消費者が人間による推薦よりもAIによる推薦を好む現象――がどのようなケースで生じるのかを示した。