5年間の変革を経たツー・トップ経営

 マイケル・デルが自身の名を冠したコンピュータ会社を創設したのは1984年のことである。それから8年後、彼が27歳の時、デルは「フォーチュン500」の最年少CEOとなった。まもなく産業界では、ディスインターミディエーション(中間業者を通さないこと)と直販システム、情報と運転資本を高次元で管理するデルのビジネスモデルが大きな話題となった。98年、HBRでも"The Power of Virtual Integration"[注1]というタイトルで、マイケル・デルのインタビューを掲載している。

 以来、デルは市場シェアを拡大する一方、競合他社のどこよりも大きな利益を株主に還元し続けている。当初1000ドルの資本金で設立されたデルの時価発行総額は現在1000億ドルを上回っている。

 デルが成功した秘訣は、かの有名なビジネスモデルだけではない。高い目標と高度に統制された堅実なマネジメントがそのDNAに組み込まれている。デルは単なる効率的な生産工場とは違う。変化に素早く適応できる組織として、完璧なタイミングで新規市場への参入を果たしてきた。現在、同社は5万3000人の社員を擁し、80カ国以上で事業展開している。

 2005年2月、同社の創設者であり、現在会長を務めるマイケル・デルが不惑を迎えた。かつてベイン・アンド・カンパニーでコンサルタントを務めていたケビン・ロリンズがデルと出会ったのは93年のことだった。ロリンズはその後、96年にデルに入社し、昨2004年、CEOに任命された。会長とCEOのオフィスは隣同士にあり、ガラス製の壁で仕切られている。壁の中央には大きなドアがあり、それが閉じられることは絶対にない。

 デルは株主に膨大な利益をもたらす一方、社員に高い成果を期待する文化を培ってきた。5年間で売上げを倍増させるには、何ごともやり遂げなければ気が済まないという組織文化を新しい需要にふさわしいものに軌道修正させなければならなかった。ロリンズとデルはこのように告白する。

 同社が20年間にわたって優位に立ってきた理由を検証するために、HBR誌編集長のトーマス A. スチュワート、ならびに1999年から2002年にかけてデルの戦略担当バイス・プレジデントを務めたコンサルティング・エディターのルイーズ・オブライエンが、テキサス州ラウンドロックにあるデルの本社でロリンズとデルに面会した。両氏はこのインタビューで、互いに協力しながら、ビジネスモデル、そして経営力を開発するシステムと企業文化を改革してきた経緯について語っている。