信頼を回復するために
失われた信頼は回復できることを、筆者らの研究は示している。
連邦議会議事堂襲撃事件は、終わりの始まりではなく転機になるかもしれない。信頼を回復する道のりは長いが、あらゆる道と同じように、重要なのは最初の一歩を踏み出すことだ。現時点では、国民の信頼を取り戻すために、政府指導者ができることは3つある。
(1)メッセージを1つに絞る
暴徒たちの行動は絶対に許されない。政治でコンセンサスを築くのは難しいものだが、連邦議会議事堂の襲撃はどのような形であっても許されないと言明することであれば、すべての議員が一致できるはずだ。
共和党議員らは、今回の襲撃はアンティファ(極左活動家の緩やかなネットワーク)によるものだったと、根拠もなく示唆している。しかし、国民は、みずからの目と耳で確たる証拠を目撃した。大量のビデオには、MAGAハット[注]をかぶり、トランプの名前が書かれた旗を振る人々が、私たちの政府の座を略奪し、冒涜する姿が映っている。
明らかな証拠があるにもかかわらず、対立する党派の仕業だと唱えれば、現実の否定を奨励し、議員に対する信頼を失わせることになる。連邦議議会事堂を攻撃することは許されないという一致したメッセージは、議員たちがみずからの高潔性に対する信頼を回復する第一歩になるだろう。
(2)犯罪者を処罰する
逮捕者がこれほど少ないのは衝撃だ。暴力により死傷者が出て、財物が破壊されたのだから、なおさらだ。しかし、連邦議会議事堂に対する攻撃は、建物の破壊行為だけではない。
連邦議事堂は、アメリカの人民に対する約束を象徴する場所だ。攻撃者たちを罪に問わなければ、2つのメッセージを送ることになる。第1に、暴力と破壊は問題ないというメッセージだ。第2に、アメリカの約束、アメリカの法律とプロセス、そしてそれをつくる議員たちは保護する価値がないというメッセージである。
(3)扇動者とりわけトランプの責任を問う
この事件には多くの人が関与した。これには直前の集会で群衆をけしかけた人々や、連邦議事堂前で暴徒に向かって高らかに拳をあげたジョシュ・ホーリー上院議員も含まれる。だが、究極的には、すべてトランプを支持して行われたことだ。
議会がただちにトランプを弾劾しなければ、あるいは憲法修正25条を発動して大統領の座から排除しなければ、たとえ大統領のためであっても、アメリカ合衆国に対する暴力を煽ってもよいというメッセージを送ることになる。
トランプは選挙に負けた。しかし過去の候補者たちのように、権力の平和的な移行と結束を呼びかけるのではなく、戦うよう支持者をけしかけた。その後発表されたスピーチ映像で、トランプは依然として選挙は盗まれたと主張し、暴徒たちに「きみたちを愛している。きみたちはとても特別な存在だ」と呼びかけた。
これは将来、どのような前例となるのか。これほど分断された国で私たちがいま行動を起こさなければ、将来、適切に機能する政府はもちろん、平和的な権力の移行などとうてい期待できない。
HBR.org原文:The Breach of the U.S. Capitol Was a Breach of Trust, January 11, 2021.