好奇心
適応力とは、自分では変えられないことを受け入れると同時に、変えられることを認識することでもある。その際、好奇心が大きな役割を果たす。自分自身や他者、あるいはみずからを取り巻く世界に一度も疑問を投げかけたことがなければ、目の前に存在する以上の可能性や道筋、意見を知ることはできないだろう。
好奇心を働かせるには、目の前にある「いま」に意識を集中させなければならない。話すよりも聞くことに力を入れ、多くの質問を投げかけ、新しいアイデアを観察し、見慣れないものを受け入れる必要がある。何より重要なのは、無意識の思い込みに疑問を投げかけることだ。
「ロンドンの仕事のオファーを引き受けたらどうなるか」というように、好奇心がある時は、安易なことや自明なこととは違う未来を想像する助けになる。「私は、なぜ新しい場所で動けないのか。なぜ変化を起こせないのか」と自分に疑問を抱くと、新しいことを試すのを妨げている自分の行動や恐怖が見えてくる。それは自発的に適応し、変化することを学ぶ第一歩だ。
好奇心を育む方法
興味はあるものの、まったく知識がない、あるいはほとんど知識がない物事をリストアップしてみる。仕事に関係する事柄に限定しないこと。リストには「人工知能は私の仕事にどのような影響を与えるか」という項目が入るかもしれない。「なぜワイングラスは細い棒についているのだろう」「どうすれば本を執筆したり、ポッドキャストを始めたりできるだろう」という項目もあるかもしれない。
すべてを書き出したらリストを見直して、自分が最も明るい気持ちになれるものにハイライトを引く。そして毎日わずかな時間を割いて、それについて学ぼう。私の場合、毎朝仕事に行く前に15分間、学習時間を設けている。わずか15分だが、1年間続ければ、65時間分の知識を習得できる。
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こうしたスキルを習得すると何が起きるだろうか。実にたくさんのことが起きる。私の研究では、自発的な適応力をつけた人たちには、次のようなことが起きていた。
・時間管理が上手になる。時間とは、自分が持つ最も大切で貴重なリソースであることに気づくからだ。
・「ノー」と言うことがさほど怖くなくなり、頻繁に言えるようになる。
・恐怖は、自分のコンフォートゾーンから一歩踏み出すゴーサインだと考えられるようになる。なぜなら、成長はコンフォートゾーンの外で生まれるからだ。
・自分とは異なる考え方をする人たちと付き合うようになる。異なるレンズを通して世界を見るきっかけを与えてくれるからだ。
・黙って座っていることが快適になる。脳が最もパワフルな仕事をするのは、そのような状態の時だと知っているからだ。
・最初に出てくる答えを受け入れない居心地の悪さを信頼する。
・人との深い結びつきを構築する時間を捻出するようになる。そのようなつながりの向こうに機会や可能性があることを知っているからだ。
幸せは目標であるべきではないし、最終的な状態としてあるべきものでもない。自分のあり方の一つにすぎないのだ。
不確実な世界では、厳しい要求に聞こえるかもしれない。しかし、幸せとはどういうものか、その理解を変えることで、いますぐにでも、より大きな幸せを感じられるようになるかもしれない。
HBR.org原文:What You Were Taught About "Happiness" Isn't True, January 12, 2021.