
自社が社会に影響力を持ち続けるためには、データドリブンな組織に変わることが不可欠である。しかし、多くの企業がデータ関連の投資を増やしているものの、変革が順調に進展しているとは言えない。筆者らがフォーチュン1000に属する業界大手を対象に毎年実施している調査から、その事実が明らかになった。そして変革が進まない最大の障害は、技術ではなく文化にあることが判明した。本稿では、データドリブンな組織に生まれ変わるために、リーダーが実行すべき3つの取り組みを提案する。
今日、社会のメインストリームを歩む企業として繁栄していくためには、データドリブンであることが求められる。
この分野で後れを取った企業が目の当たりにしてきたのは、過去10年にわたりデータドリブンな競合が市場シェアを奪い、自社の顧客基盤に侵入してくる様子、そしてアマゾン・ドットコム、フェイスブック、グーグルといった先駆者たちの圧倒的な時価総額の成長だ。
フォーチュン1000に属する大手企業は現在、この差を挽回するために、データと人工知能(AI)の取り組みに大きく投資することで対抗している。
ニューバンテージ・パートナーズが新たに発表した企業幹部への調査の結果によれば、データとAIへの投資は3年連続でほぼ普遍的となり、今回の調査では回答企業の99.0%が実施していると答えた。なお、ニューバンテージ・パートナーズは、筆者が2001年に創業した戦略アドバイザリー会社だ。フォーチュン1000企業を対象にデータリーダーシップに関する助言を提供している。
しかし今年は、投資は増えているものの、ほとんどの企業は取り組みの進展に苦労しているようだ。
大手企業の最高経営幹部を対象とした、ビッグデータとAIの取り組みの進展に関するこの年次調査は、今年(2021年)で9回目となる。2021年版ではフォーチュン1000に属する業界大手85社を対象とし、2012年の初回以来、企業の参加率と代表性は最も高い。
参加企業は金融サービス、生命科学、ヘルスケア、小売りの一流大手であり、アメリカン・エキスプレス、アンセム、バンク・オブ・アメリカ、ブリストルマイヤーズ・スクイブ、キャピタル・ワン、シグナ、CVSヘルス、イーライリリー、グラクソ・スミスクライン、JPモルガン・チェース、リバティ・ミューチュアル、マスターカード、マクドナルド、メルク、ファイザー、サノフィ、スターバックス、ユナイテッド・ヘルス、ビザ、ウォルマートなどが含まれる。
今年は、最高データ責任者または最高アナリティクス責任者の役職を担う回答者が76.0%と、過去最多となった。回答者は皆、社内のデータに関する監督権限と責任を持つ最上位の経営幹部である。
調査開始から約10年を経て、我々は2つの顕著な傾向に気づいた。第1に、大手企業はよりデータドリブンになる努力の一環として、ビッグデータとAIの施策に継続的に投資してきた。投資ペースが加速していると答えた企業は91.9%、投資額が5000万ドル以上とした企業は62.0%に上る。
第2に、ビッグデータとAIへの投資は過去最高水準であっても、そこから価値を引き出すこと、そしてデータドリブンな組織になることに、企業がいまだ苦労し続けている様子が今回の調査で示された。
大手企業は往々にして、旧世代のデータ環境、業務プロセスとスキル群を抱え、変化を敬遠しがちな伝統的文化もある。データの需要と量が増え、データのケイパビリティを伸ばそうと模索する中で、彼らはますます大きな課題に直面しているようだ。