変革(transformation)という言葉はさまざまな意味で使われる。筆者アンソニーは、変革の取り組みを「オペレーション」「オペレーションモデル」「戦略」という3分野に整理し、それぞれの概要を説明する。
今日の企業の合言葉は「変革(transformation)」だ。それにはもっともな理由がある。我々イノサイトの研究では、S&P500企業の構成は今後15年の間に75%が入れ替わると予測している(英語報告書)。別の研究では、米上場企業の3社に1社が、今後の5年間で上場廃止に向かう可能性があるという(英語論文)。さらに別の調査によれば、業界のリーダー企業がその地位から5年後に陥落している確率は、1世代の間に2倍に増えたという(1970年代~2000年代で比較)。
ソフトウェアが世を席巻している。ユニコーン企業の勢いは止まらず、跳ね回っている。大企業の幹部は、それらに対応する必要性についてはしっかり認識しているのだ。
しかし、経営幹部が「変革」と口にする時、実際には何を意味しているのだろうか。この言葉はしばしば、3つの根本的に異なる取り組みに対して混同して使われる。
1つ目の使い方は「オペレーションの変革」だ。現在の活動を、より巧みに/より速く/より安くやることを目指すものである。多くの企業が取り組む「デジタル化の推進」がこれに該当する。新たなテクノロジーを使って、古くからの問題を解決する試みだ。オペレーションの改革は時に痛みを伴い、業績を大いに高めることもある。
しかしこれは、「形態、性質、外観などが著しく変化すること」、あるいは「何かを完全に(通常は良い方向へと)変えること」という、辞書にあるようなtransformationの定義には合致しない。オペレーションの改革によって、たしかにコスト削減や顧客満足の向上は図れるかもしれないが、会社の本質が大きく変わるわけではない。そしてこの変化の激しい世界では、古いゲームをより巧みにこなすだけでは不十分である。
2つ目に、「オペレーションモデルの変革」という使い方がある。コア・トランスフォーメーションなどとも呼ばれ、現在の活動を根本的に違う方法でやることを指す。
ネットフリックスの取り組みがその好例だ。過去5年の間に、DVDの郵送からストリーミング映像のウェブ配信へと移行した。さらに、他者が制作した作品をただ流すだけでなく、自社のオリジナル作品の制作に多くの投資をするようになった。その際、作品が視聴者に響く可能性を最大限に高めるために、顧客の嗜好に関する自社の膨大な知識を活用している。
顧客は以前もいまも、ネットフリックスに娯楽を求め、新たなコンテンツを見つけようとする。だが、同社がその課題を解決する方法は、ほぼ完全に変わった。
3つ目は、最も大きな可能性とリスクを伴うこと、すなわち「戦略の変革」である。これは会社の本質的な部分を変えることになるため、まさに変革と呼ぶにふさわしい。液体が気体に、鉛が金に変わるようなものだ。
アップルはコンピュータから個人用小型機器に、グーグルは広告から無人運転車に進出した。アマゾンは小売りからクラウドコンピューティングに、ウォルグリーンズは医薬品小売りから慢性病の診療へと事業を広げた。戦略の変革は、成功すれば会社の成長エンジンを生き返らせる。やり方がまずければ、反対派に「自社のやるべきことに専念しろ」と責めたてる口実を与える。