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CDO(最高データ責任者)の役職を設置する企業はますます増えているが、その在任期間は驚くほど短く、3年以上続く人は稀である。業務の性質上、短期で成果を上げることが難しいこともあり、当初は得られた社内の支持を維持できないのだ。本稿では、CDOが短命に終わる理由を明らかにするとともに、長期間の在職を実現するために何をすべきかを示す。


 CIO(最高情報責任者)の本当の意味は「キャリア終了」(career is over)だ、というジョークがよく言われたのは30年前のことである。やがてCIOの在職期間が延び、役割がより制度化されていくにつれ、このジョークは時代遅れとなった。

 一方で現在では、最高幹部職の中で最も不安定なのはCDO(最高データ責任者)かもしれない。在職期間は短く、離職率は高い。そして昔のCIO職と同様に、多くの企業はこの職務に何を求めるのかを完全には理解していないと思われる。

 しかし、CDO職の不安定化は避けられないことではない。その価値をもっと見えやすくし、ある程度迅速に成果を上げ、在職期間の長期化につなげる――そのための方法はあると筆者らは考えている。職務をより明確に定義し、技術面よりもビジネス面に焦点を当てることも有効だ。比較的に稀な、長く在職するCDOらとの対話から、新任者にとって貴重な知見がもたらされた。

CDO職は増加中だが不安定

 大企業におけるCDO職は、近年になって急増している。データ集約型の大企業を対象としたニューバンテージ・パートナーズによる2021年の調査では、65%が最高データ責任者を置いていると回答した。この数字は、キャピタル・ワンによってCDO職が初めて設置された2002年と比べると急増しており、2012年の同調査における12%よりもはるかに多い。

 CDOの任命では金融サービス企業が先行したが、いまでは小売りやヘルスケア、さらには政府まで、大量のデータを扱う他業界も後に続いている。

 一般的に、この傾向が反映しているのは、データは重要なビジネス資産であり、上級幹部が管理すべきであるという認識だ。また、データとテクノロジー――後者はたいていCIOか最高技術責任者(CTO)に管轄される――は同じではなく、異なるマネジメント手法が必要であることも認識されている。しかし、これらは現象の一部分にすぎない。

 データおよび筆者らの経験からわかるのは、CDOという職は不安定であることだ。ガートナーの調査と筆者らの分析によれば、平均在職期間は2年~2年半で、3年以上続く人はごくわずかである。

 CDOの大半は就任時には支持を受けるが、この「ハネムーン」は18カ月程度で急に終わりを告げる場合が多い。その時期になると、目立った変革を達成しているかどうか説明責任を問われるのだ。大規模で旧来的な組織では、データの変革は少なくとも数年かかるのが通常であることを踏まえれば、このタイミングは性急だ。

 CDO職がより一般的である金融サービスでも、離職率は高い。過去2年間でCDOの退任(および一部は新規登用)があった企業の例として、JPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴ、ゴールドマン・サックスアメリカン・エキスプレスAIG、トラベラーズ、ネーションワイド、チャールズ・シュワブ、USAA、TDバンク、モントリオール銀行、メットライフ、BNYメロン、フレディ・マック、プルデンシャル、TIAA、トゥルイストなどがある。

 CDOの需要は高いため、退職しても通常はすぐに別の職に就くことができる。しかし、大半は次のCDO職でも、高い期待のわりには短期間で価値提供ができない、というお馴染みの問題に突き当たる。

 そのうえ、新しい役職が生まれるたびにCDO職は「剪定」の対象となっている。ほとんどの組織では、CDOの仕事には元々、データセキュリティが含まれていた。しかし現在、多くの企業ではCISO(最高情報セキュリティ責任者)がこの問題に対応する。これまでデータのプライバシーもCDOの管轄だったが、CPO(最高個人情報保護責任者)がその任を引き継ぐケースもある。

 一部のCDOは、アナリティクスとAIによってデータを解明する役割も担っていたが、いまではCAO(最高アナリティクス責任者)も十分に確立された職務だ。とはいえ、後述するように一部の賢明な企業は、これをCDOの仕事と組み合わせて、CDAO(最高データおよびアナリティクス責任者)としている。

 これらはCDOという職の発展初期ならではの問題にすぎず、認知度が上がれば安定していくはずだ――そう考える人もいるかもしれない。しかし、多くの企業と在任中のCDOによる、この職の責務に対する定義づけと注力のあり方に、いくつか問題が内在しているのだ。