リーダーの言う「変革」の意味を明確にすることは重要である。上記3分野の取り組みは、それぞれ大きく異なる方法で測定・管理する必要があるからだ。

 オペレーションモデルの変革では、業績を測る指標を変えなくてはならない。ネットフリックスの場合、DVDのモデルでは、倉庫の最適化と物流コストを管理することが求められる。ストリーミングのモデルでは、ウェブサイトの稼働時間と回線コストを管理する。変革と称した取り組みの前と後で同じ測定指標が使われているのなら、実際にはさほど変化を成し得ていないということだ。

 戦略を変革すると、自社が属する競合群が変わる。グーグルは広告という中核事業では、他のコンテンツ企業やテクノロジー企業と競っている。無人運転車で競合となるのは、ゼネラルモーターズやBMWなどのメーカーだ。アップルも同様に、過去にはマイクロソフトやIBM、デルなどが相手であった。iPodとiPhone以降は、ソニーやノキア、モトローラといった新たなライバルと競うことになった。

 これら3つの取り組みは、そのインパクトも異なる。「昨日よりもよい今日」を目指すオペレーションの改善は、過去のやり方の熟達者を生むような行為にすぎない。それは短期的な生き残りの策であり、長期的な持続効果はない。

 むしろリーダーが考えるべきは、オペレーションモデルと戦略の変革をいかに組み合わせ、我々イノサイトの言う「2本立ての変革」を進めるかである(本誌論文「相反する2つの変革を同時に進める法」を参照)。

「変革A」では、現在中核となっているオペレーションモデルを見直し、今日の事業を強化する。「変革B」は、将来の中核事業を生み出すために行う(新規事業の創出)。2つの変革には、入念に構築された「ケイパビリティのつながり」(両方の取り組みでリソースやケイパビリティを共有・交換できる体制)を通して、連携と調整を図ることが求められる。

 リーダーはこの方法で、破壊的変化が突きつける課題に対処できる。そして未来によって破壊されるのではなく、未来をみずから拓くことができるのだ。


HBR.ORG原文:What Do You Really Mean by Business “Transformation”? February 29, 2016

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スコット・アンソニー(Scott Anthony)
イノサイトのマネージング・パートナー。同社はクレイトン・クリステンセンとマーク・ジョンソンの共同創設によるコンサルティング会社。企業のイノベーションと成長事業を支援している。主な著書に『イノベーションの最終解』(クリステンセンらとの共著)、『イノベーションへの解 実践編』(ジョンソンらとの共著)、新著に『ザ・ファーストマイル』がある。