リーダーシップを左右する行動論理

 発達心理学の研究者たちによれば、リーダーの能力格差の原因は、リーダーシップ観、人格、マネジメント・スタイルではない。それは、内なる「行動論理」、すなわち、どのように周囲の状況を理解するか、自分の権力や安全が脅かされた時、どのように反応するかによる。しかし、自分の行動論理を理解しようとするリーダーは少なく、行動論理を変えようとする人はもっと少ない。

 リーダーは自分の行動論理を正しく認識し、これを変革していくべきである。我々の研究結果を見ると、己を知り、成長しようと努めるリーダーは、自身の能力を伸ばすだけでなく、組織のケイパビリティまで変えていけるからだ。

 我々は心理学者のスザンヌ・クック=グルーターの協力を仰いで、ドイツ銀行、ハーバード・ピルグリム・ヘルスケア、ヒューレット・パッカード(HP)、NSA、トリリアム・アセット・マネジメント、ボルボ、イギリスの保険グループのアビバなどの企業に、25年にわたる調査に基づいてコンサルティングを提供してきた。またリーダーシップ・スキルの開発に意欲的な経営幹部と一緒に仕事をしてきたのである。

 自分の行動論理の理解に努めれば、リーダーシップを高められるというのは、何とも耳寄りな話ではないか。そのためには、現在の自分がどのようなタイプのリーダーなのか、まずこれを見極めなければならない。

7種類の行動論理

 我々の調査では、「リーダーシップ開発プロファイル」(leadership development profile)という穴埋め式アンケートを用いる。被験者には、「優れたリーダーは──」といった出だしの決まった36個のセンテンスを完成させるように求める。回答は実にさまざまだ。たとえば、こんな具合である。

「優れたリーダーは、ムチを鳴らす」

「優れたリーダーは、部下の成績を向上させる意義を理解している」

「優れたリーダーは、相反する要素を勘案し、自分の判断に責任を負う」