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人工知能(AI)の活用が進むにつれ、人間の労働を機械が代替し始めている。ただし、人間と機械は競争関係にあるわけではない。それぞれが持つ「知能」は本質的に異なるからだ。筆者らは、人間の知能と機械の知能を組み合わせることで生まれる「拡張知能」が、知的労働の未来を切り開くと主張する。本稿では、チェスのグランドマスター(最高位)のガルリ・カスパロフによる革新的な事例を紹介しながら、AIの力で人間の知能を拡張するために何をすべきかを提示する。


 今日の経済において、データは企業の価値創出と競争の方法を変貌させている。人工知能(AI)を大規模に活用すれば、2030年までに世界経済に最大15兆7000億ドルの効果がもたらされるという専門家の予測がある。

 AIは企業のあり方を変えている。このため、仕事を遂行する主体も変わり、組織は人間の従業員知能機械に置き換え始めるだろうと考える人は多い。