オフィスの変貌

 2019年6月、IOC(国際オリンピック委員会)は新しい本部となる「オリンピックハウス」をスイスのローザンヌに開設した。6年以上の歳月をかけ、1億5000万ドルを費やした新本部だが、わずか9カ月で誰もいなくなった。世界中の知識労働者と同様、IOCのスタッフも在宅勤務になったからだ。

 コロナウイルスが世界に強制したこの自然実験により、1980年代からリモートワークの可能性を口にしていた一部の学者やハイテク業界のビジョナリーたちは、けっして大言壮語していたわけではないことが示された。

 コロナが大流行する以前の研究でも、豊かな先進国では一部の労働者が在宅でも十分に仕事ができると証明されており、またそうした労働者のおよそ80%が(少なくとも部分的な)在宅勤務を望んでいることも判明している。雇用者側もまた、何カ月ものリモートワークを実際に経験した結果、オフィスがなくても大半の業務は遂行できるし、会議もほとんどは問題なくこなせると学んだのである。