柔軟な働き方を実現する新しい仕組み
2020年2月後半、新型コロナウイルス感染症の流行がもたらす影響が明らかになり始めると、富士通の人事部門トップである平松浩樹は、自社が大激震に見舞われることを覚悟した。
富士通では、以前から柔軟な働き方の導入を目指していたが、それまで進展らしい進展はほとんどなかった。同社の日本オフィスで働くマネジャーの大半は、いまだに対面によるやり取りと長時間のオフィス勤務に重きを置いていた。その点では社員も同様だった。この少し前に行われた社内調査によれば、同社の全社員の74%は、オフィスが仕事をするのに最適な場所だと考えていたのだ。しかし、コロナ禍により、すべてが根底から変わるだろうと、平松は予想した。
実際、同年3月半ばには、日本で働く社員の大半(人数にして約8万人)が在宅勤務を始めていた。その後、社員が柔軟な働き方の利点を実感し始めるまでに、時間はかからなかった。5月の社内調査では、オフィスが仕事をするのに最適な場所だと考える人は15%まで減っていた。約30%の人は、自宅が最適な場所だと回答し、残り55%は、在宅勤務とオフィス勤務のミックス方式、言ってみれば「ハイブリッド型」が好ましいと答えた。