
自己批判こそが、みずからを成長させる。あなたもそう考えてはいないだろうか。だが、過度な自己批判にはネガティブな側面があることを忘れてはならない。とりわけ「繊細な努力家」と呼ばれるタイプの場合、常に自分を駆り立て、優秀であろうとするものの、自分の高すぎる要求に応えられず、自己批判のスパイラルに陥りがちだ。実際、自己批判は脳を思考停止の状態に追い込み、目標達成のために行動することを妨げてしまう。本稿では、これらのパターンを打破し、自分のパフォーマンスに対してバランスの取れたアプローチをするための処方箋を提示する。
筆者のクライアントの一人で、製薬会社の研究開発ディレクターを務めるベンは、ひどく狼狽した様子でコーチングセッションにやって来た。「今日、職場で起きことが頭から離れない」と、彼は言った。
話を聞くと、ベンは世界の全従業員が参加する全社会議の準備に何時間も費やしたという。議題を確認し、自分が話をするポイントをまとめ、しっかりと役目を果たすつもりで会議システムにログオンした。
ところが、そこから調子がおかしくなった。自分より声の大きな同僚に押し切られてなかなか発言できず、ようやくチャンスが回ってきた時には動揺し、思うように話すことができなかった。
全社会議が終わっても、そのことで頭がいっぱいだった。自分をとがめずにはいられなかった。なぜもっと早く発言し、もっと積極的に主張しなかったのか。なぜ話すべきポイントから外れて、だらだらと余計な説明を続けたのか。
ベンは、筆者が「繊細な努力家」(sensitive striver)と呼んでいるタイプ、つまり物事を人一倍掘り下げて処理し、優れた成果を上げながらも、極めて繊細な人物だ。常に自分を駆り立て、優秀であろうとする。ところが、自身の高すぎる期待に応えられないと、生来の感受性の強さと考え込む性質によって自己批判のスパイラルに陥る。
ベンの反応に心当たりがあるならば、あなたも自分に厳しすぎるかもしれない。これは懲罰的で厳格な判断や、自分の欠点の過剰分析、軽微なミスの反芻、心配性、失敗への思い込みといった形で現れる。
自己批判こそが自分を研ぎ澄ましている。そう信じてきた人もいるだろう。ベンのような繊細な努力家が、頻繁に用いる動機づけの形の一つだ。自分を厳しく追い詰めれば、優れた結果を出さずにはいられないはずだと期待する。
しかし、調査によれば、自己批判は戦略として不備がある。過度に用いれば、一貫してモチベーションも自制心も低下し、先延ばしが増長される。自己批判は実際、脳を思考停止の状態に移行させ、目標達成のために行動することを妨げるのだ。
自分に厳しくすることは効果がないだけでなく、打破するのが難しいパターンだ。それには一貫した注意と練習を要する。以下は、筆者がベンと一緒に実行したいくつかの戦略である。自分のパフォーマンスに対して、より心の平静とバランスを保ったアプローチをするための第一歩にしてほしい。