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データドリブンな意思決定に対する依存度が高まるにつれ、消費者のパーソナルデータを適切に管理する重要性がいっそう高まっている。膨大なデータを取得し、それをクラウド上で管理することが一般的だが、優れたインサイトを導くために必ずしもデータの量が必要なわけではない。筆者らは、ビジネス・インテリジェンスに影響を及ぼすことなくプライバシーを保護するために、クラウドコンピュティーングではなくエッジコンピューティングの活用を検討すべきだと指摘する。


 消費者データを集める際にはほとんど常に、消費者のプライバシーに対するリスクがつきまとう。センシティブな情報は、意図せず流出したり、悪意ある何者かによって漏えいされたりするかもしれない。2017年に起きたエクイファクスによるデータ漏えいの事例では、1億4300万人もの米国消費者の個人情報が危機にさらされた。

 もっと小規模な漏えいは、知られているか否かはともかく、常に生じている。企業がより多くのデータを集め、そこから得られるインサイトへの依存を高めるにつれ、データが危機にさらされる可能性は高まる一方であろう。

 とはいえ、適切なデータアーキテクチャとプロセスによって、パーソナルデータへのタッチポイントを可能な限り減らすよう万全を期すことで、これらのリスクは大幅に緩和できる。

 具体的には、企業はエッジコンピューティングと呼ばれるものの可能性を検討すべきである。この枠組みでは、コンピューティングが実行される場所はクラウドではなく、ネットワークの末端(エッジ)にある機器、つまりデータが生成される場所の近くだ。例として、アップルのフェイスIDを機能させるコンピューティングは、まさにiPhone上で行われる。

 ビジネス、コンピュータサイエンス、統計の観点からプライバシーについて研究する筆者らは、このアプローチは理に適っており、もっと広く使われるべきだと考えている。なぜならエッジコンピューティングによって、クラウドへのセンシティブ情報の送信と保存が最小限に抑えられ、悪者の手に渡るリスクが減るからである。

 とはいえ、このテクノロジーは実際にどう機能し、アップルほどのリソースを持たない企業はどのように導入すればよいのだろうか。

 あるワイン店が、新しいワインに対する消費者の反応を測定するために、試飲中の消費者の顔を記録したいという状況を仮定してみよう。店主は2つの対照的なビデオ技術のどちらかを選ぼうとしている。

 1つ目のシステムは、数時間に及ぶビデオ映像を記録し、そのデータをサードパーティのサーバーに送信して、内容をデータベースに保存し、顔分析アルゴリズムで映像を処理する。そして、消費者の80%は新しいワインを試飲して満足そうである、というインサイトを報告する。

 2つ目のシステムは、顔分析アルゴリズムをカメラ上で作動させ、いかなる映像についても保存や送信を行わない。そして同じく80%の集約的インサイトをワイン店に報告する。

 この第2のシステムはエッジコンピューティングを用いて、人間、サーバー、データベース、インターフェースによるパーソナルデータへの接触回数を制限している。したがって、データ漏えいや将来の不正使用の機会を減らすことになる。ビジネス上の意思決定に必要十分なデータ、すなわち「このワイン店は新しいワインの広告に投資すべきか」を判断するに足るデータのみを集めるわけだ。

 企業は顧客のプライバシー保護に取り組む中で、上記と似たような状況に直面することになる。そして多くの場合、エッジコンピューティングのソリューションが存在する。以下に、企業が知っておくべきことを挙げる。