突然のサービス停止命令

 2013年11月のある金曜日の夕刻、社外での戦略会議に参加していた私に、米食品医薬品局(FDA)から宅配便で小包が届いたとのメールが来た。当時、当社はもう何年もFDAとの間で事業の規制をめぐって堂々めぐりの議論をしていたので、私は心配になった。なるべく時間を稼ごうと思い、「(受け取りの)サインをしないで!」とメッセージを返したのだが、「すでにサインしてしまいました」との返事。実は、その小包には23アンドミーの方向性を永久に変えることになる警告書が入っていた。

 月曜日の朝、警告書は報道陣に公開された。FDAがこれほど唐突に事を運ぶことはめったにない。マスコミからの電話が鳴り始めた。元FDA長官のデイビッド・ケスラーが電話をくれた。ケスラーは、当社の創業以来非公式に助言をくれていたのである。「アン、君はおそらくこの書簡のことをさほど心配していないだろう。だが言わせてくれ。君は心配したほうがいい。FDAは本当に怒っているんだ」

 23アンドミーは当時創立7年目で、一般消費者向けに遺伝子検査を実施して健康リスク情報を直接提供する唯一の企業だった。当社は創業以来ずっと規制当局との協議を重ねてきており、たいていはどんな問題も解決できていた。ところが今回は明らかに違った。健康リスクリポートの提供を即刻やめるように命じられたのだ。検査キットの販売方法について、顧客から直接ではなく、医師から発注してもらう方法を提案したが、FDAは却下した。それでは不十分というわけだった。