旧来型の意思決定が
イノベーションを阻む

 今日のビジネスリーダーは、競争力を維持するために、デジタルツール、アジャイルな手法、リーン戦略に巨額を投じている。ところがこのような努力はたいてい、企業が必要とする画期的な業務プロセスも、大成功を収めるビジネスモデルも生み出さない。少なくとも、競合他社が進歩を成し遂げるまでは、そのようなことは実現しない。主な問題は、イノベーションにまつわる有用な判断を速やかに下せない点にある。

 企業は現在、仮説指向のイノベーションプロセスに頼っているが、これは前例のないほど多くの判断を伴う。追求すべきアイデアを絞り込むための継続か中止かの重大な判断、実験をどう行うか、どのようなデータを収集するか、判明した中身をどう解釈するか、それをもとにどのような行動を取るか、といった無数の判断である。

 ところが、いままさに実験を学びつつある企業では、判断のほとんどが非効率だったり、過去の経験や狭い視野に基づいていたりする。この結果、重大なリスクが見逃され、好ましくないアイデアがいつまでも残るため、貴重な経営資源が無駄に使われ、よりスケールが大きく革新的な挑戦の機会が台無しになってしまう。