Evgeniy Shvets/Stocksy

デジタルトランスフォーメーションが喫緊の課題とされるいま、どのような投資がチームにとって有益かを判断するには、マネジャーがチームの仕事のプロセスを把握し、何が生産性を高め、何がチームの機能を阻害しているかを特定することが欠かせない。しかし、マネジャーが実際に理解しているのはその一部に留まり、深刻な「ワークリコールギャップ」が存在する。筆者らは、プロセス管理のために機械学習アルゴリズムの導入を提案する。本稿では、機械学習アルゴリズムを用いてチームの経験をデータ化することで、ワークリコールギャップを解消し、現実に基づいた目標設定と生産性向上を実現する方法を論じる。


 マネジャーは自分のチームが実際にどのように機能しているかを、どの程度把握しているだろうか。

 筆者らは最近、フォーチュン500企業4社の14チームに所属する283人の従業員を対象に調査研究を実施した。マネジャーに自身のチームの仕事について質問したところ、平均して、チームの仕事の60%を把握していないか、覚えていなかった。極端な例では、自分のチームの仕事の4%しか説明できないマネジャーもいた。

 マネジャーがこうしたギャップの存在を正しく認識していないことの代償は、高くつく可能性がある。たとえ5人のメンバーで構成される小規模チームであっても、その代償は大きい。規模の大小を問わず、いかなる企業にも当てはまる。

 あらゆるレベルのマネジャーや主要な意思決定者は、自分のチームがどのようなプロセスを経て仕事を完遂させているのか、また、その進め方のどこに問題があるかを十分に理解しないまま、デジタルトランスフォーメーションの目標を設定する。

 そのため、どのような投資がチームに有益かを判断するのに、当て推量に頼ることが一般的だ。その結果、従業員の生産性を組織として過小評価したり、リソースや自動化などのテクノロジーへの投資を適切に配分できなかったりする。新型コロナウイルス感染症やデジタル化によるリモートワークへの移行を通じて、マネジャーは自分のチームがどのように仕事をしているかを把握することがより困難になっている。

 しかし、筆者らの研究結果からは、従業員のプライバシーが保護されている限り、機械学習アルゴリズムを利用して、チームがどのようにテクノロジーを使い仕事をしているかを学習させることで、この問題を解決できることがわかった。