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信頼について多くが誤解している
2003年秋、ジョージ W. ブッシュ大統領の侮蔑的な発言が話題になった。フォックス・テレビの記者の前で、「マスコミの報道は偏っているので、観ないようにしている」と語り、大統領はこう続けた。
「情報は客観的視点を備えた人から得なければならない。最も客観的な視点を持ち合わせているのが、私のスタッフたちだ。彼ら彼女らは、世界で何が起こっているのか、よく知っている」
政治評論家でも、大統領の伝記作家でもない私が、彼の発言についてコメントするのはいささか不遜かもしれないが、あえて言わせてもらいたい。
大統領のこの発言は、はからずも「信頼」という概念にまつわる誤解の核心を突いている。彼は信頼と客観性を結びつけて考えている。これはご明察のとおりである。ところが同時に、仕事上の相互依存関係に客観性が成立しうると思っている。多くのリーダーは、まさにこの点で判断を誤り、失脚するのである。
我々は、信頼は親近感と尊敬から生じると考えがちである。すなわち、信頼の拠りどころは人柄にあるというわけだ。たしかに個人的な関係においてはそうであり、またそう考えて何ら不都合はない。しかし、ビジネス上の信頼関係においては、人柄だけでなく能力も重視しなければならない。質実剛健なだけでは、ブルータス[注1]にはなれない。同時に、たとえばバランスシートに明るい人物でもなければならないのである。
たとえば、プロジェクト・チームや計画委員会で、上司と部下の隔てなく働いている時は、苦労を共にすることで絆が深まる。この信頼関係の土台となっているのは、誠実さと能力である。
とはいえ、社内での地位が高くなれば、信頼関係に他の要素が入り込む。つまり、お互いの立場、プロジェクトや昇進をめぐる競争、権力闘争といった点にも配慮しなければならないのである。