最後に、ウクライナ戦争が欧州の自動車生産に想像以上に大きな影響を与えていることが、現在のグローバルサプライチェーンに関するリスクを浮き彫りにしている。

 たとえば、フォルクスワーゲンとBMWは、ドイツの自動車部品メーカー、レオニがウクライナで製造しているワイヤーハーネスの供給が滞っていることを理由に、ドイツ国内の生産ラインを停止した。タイヤメーカーのミシュランは最近、ロシアのウクライナ侵攻で生じた物流面の問題が原因で、欧州のいくつかの工場を操業停止する可能性があることを明らかにした

 欧州の自動車メーカーは、国外から部品などを調達するリスクを直視し、たとえコストが増加するとしても、国内での調達を検討しているに違いない。これは欧州に、国内の製造業を強化する機会をもたらす可能性がある。

 しかし、筆者の一人であるシムチ=レビが共同執筆した論考で指摘したように、ローカライゼーションは万能のアプローチではない。中国は現在、数多くの部品に関して、唯一ではないものの最大の供給国だ。中国への依存を減らそうとすれば、多くの場合、相当の投資と時間が必要になる。

 たとえば、インテルは最近、オハイオ州の2カ所で半導体製造工場を建設するために、200億ドルを投資する計画を発表した。しかし、最初の工場が操業を開始するのは2025年になってからだ。

 さらに、今日のサプライチェーンに関する問題の多くは、産業界だけで解決できるものではない。政府の関与が不可欠だ。米国では、連邦政府と州政府が、港湾や空港をはじめとするインフラへの投資を拡大させている。「CHIPS法」と呼ばれる米国半導体製造支援法案欧州半導体法案は、半導体供給を台湾と韓国に依存している状態から脱却することを目指す政府の取り組みの例だ。

 また、ウクライナ紛争は「欧州バッテリー連盟」(EBA)の機能を強化する可能性がある。これは、先進バッテリー産業で欧州が世界のトップに立つことを目指して、欧州連合(EU)が2017年に立ち上げたイニシアチブである。

 自国や自地域のインフラ投資がなされない限り、企業は自社のサプライチェーンに関するストレステストを行い、サプライチェーンのレジリエンスを高める戦略を追求するほかない。現段階で唯一はっきりしているのは、当面の間、グローバルサプライチェーンの問題がますます増えていくということだ。


"How the War in Ukraine Is Further Disrupting Global Supply Chains," HBR.org, March 17, 2022.