
「静かな退職」(Quiet Quitting)を選択する人が増えているという。これは、
必要最低限の仕事のみを行う「静かな退職」はなぜ起こるのか
働く人々は誰もが、日々決断を下している。クビにならないように必要最低限の仕事だけをするのか。あるいは、より多くのエネルギーと努力を仕事に注ぎ込むのか。
最近では前者を選ぶ人の多くが、「静かな退職」(Quiet Quitting)を自認している。彼らは、仕事は人生の中心であるべきだという考え方を否定する。全力を尽くすことや時間外に働くことを、期待されたくないと抵抗する。自分の立場でやるべきだと思う以上のことを要求されても「ノー」という。
実は、「静かな退職」は、以前から存在する振る舞いに対する、新しい呼び方である。筆者らは数十年にわたってリーダーシップの360度アセスメント(多面評価)を実施し、「(あなたの)職場環境は、さらに働こうという意欲がわく場所か」と質問してきた。そこで、最近の「静かな退職」をよりよく理解するために、これらのデータを見返して考えてみた。職場は刑務所のような所だと考える人と、仕事に意義や目的を感じる人は、何が違うのだろうか。
その結果、「静かな退職」は一般に、従業員のより勤勉に、創造的に働こうという意欲の問題というより、退社時間が気にならないような関係をマネジャーが築くことができるかどうかという問題であることが見えてきた。
●データからわかること
今回検証したデータは2020年以降に収集したもので、2801人のマネジャーが、直属の部下1万3048人に評価されている。1人のマネジャーは平均5人の部下に評価されており、以下の2つのデータポイントを比較した。
・従業員によるマネジャーの評価「結果を出すことと、他者のニーズへの配慮とのバランスをとる」能力について。
・従業員による自分たちの評価「職場環境はさらに働こうという意欲が湧く場所かどうか」について。
よりいっそうの努力を惜しまないことを、専門用語で「自発的努力」と呼ぶ。こうした努力は組織に大きな影響をもたらしうる。あなたに直属の部下が10人いて、それぞれ10%余分に努力すれば、追加分を足し合わせた成果は生産性の向上につながる。
分析の結果は以下のグラフのようになった。最も評価が低いマネジャーは、最も評価が高いマネジャーに比べて、「静かな退職」のカテゴリーに入る部下が3~4倍多い。彼らの直属の部下の14%が「静かな退職」を選び、よりいっそう働きたいと思う部下は20%しかいなかった。一方で、結果を出すことと人間関係のバランスが最も優れていると評価されたマネジャーの、直属の部下は62%が努力を惜しまず、「静かな退職」を選ぶ人はわずか3%だった。