いまだくすぶるストック・オプションの費用計上反対論

 ゼネラル・エレクトリック、マイクロソフトやシティグループといった企業は「社員へのストック・オプションはコストである」という前提を受け入れるようになった。その結果、ストック・オプションの会計処理に関する議論は、損益計算書にそのコストを「計上すべきか否か」から、「どのように計上すべきか」に移りつつある。

 ところが、ストック・オプションをコストとして認識することに反対している勢力はいまなお、論争の引き延ばしを図っている。彼らが指摘しているのは、ストック・オプションのコストをこれが付与される日に基づいて理論的に計算すると、あまりにも大きな誤差が生じるという点である。

 このため、計上するコストが正確に決定できる時点──すなわち、ストック・オプションが権利行使された時点、その権利が失効した時点、あるいは権利行使期間が終了した時点──までコストとして認識することを延期するように求めている。

 しかし、ストック・オプションをコストとして認識する時期を遅らせることは、会計原則とも現実の経済とも相容れない。そもそもコストは、それに関連する売上げに対応して計上しなければならない。やはりストック・オプションを付与するためにかかるコストは一定期間にわたって費用計上すべきである。

 通常この一定期間とは権利が確定するまでの期間であり、勤労意欲が高まり、会社に定着した社員が、その会社のためにさらなる売上げを創出することで、ストック・オプションという報酬を「稼いでいる」と見なされる期間である。

 ある程度の誤差が生じるからといって、コストとして認識する時期を遅らせる理由にはならない。実際、事業報告書には将来の出来事を予想し、これを見積もった数値がたくさん使われているではないか。たとえば、製品保証費、貸倒引当金、将来の年金および雇用契約終了後の給付金、そして環境破壊や欠陥製品に備えた偶発的債務などがある。

 さらに重要なことは、オプション価値の算定に用いるモデルは大変高度化されており、おそらく社員へのストック・オプションは財務諸表に計上される他の多くの見積もり値よりも正確に評価されうるという点である。