優れたリーダーの条件
20年以上前のことになる。筆者は、同僚のアンソニー・メイヨーとともに、それまで手がけたことのない野心的な研究プロジェクトに着手した。「傑出したビジネスリーダーを決定付ける特徴とは何か」という問いを立てて、その答えを導き出すため、20世紀の優れた米国企業リーダーを1000人選び出し、一人ひとりを精査した。
その結果は驚くべきものだった。優れたリーダーを特徴付けていたのは、長年変わらない本人の資質というよりも、特定の時期に生じる機会を認識し、それに適応する能力だったからだ。彼らは「時代精神」(zeitgeist)をつかめる人物だった。つまり、ある時代を決定付ける機運や風潮、アイデア、考え方を察知できる能力があったのである。
リーダーシップの有効性とは、言い換えれば、おおむね状況次第で変わるということだ。ある時期に成功した同じ人物でも別の時期には無残にも失敗することがある。筆者らが2005年に初めてHBRで発表した論文[注1]によると、時代精神は、6つの要因(世界情勢、政府の介入、労働者、人口、社会的価値観、技術)から成り立っている。