「再起力」の不足が招く混乱

 言うなれば、いまは「再起力」(resilience)不足の時代である。世界はますます波乱に満ち、企業は復活を試みるものの、変化はそれ以上に速いスピードで進行している。これを裏づける証拠はたくさんある。

 まず昨今、大企業の倒産が増えた。過去20年間に起きた最大規模の倒産20件のうち、半分の10件はここ2年に集中している。また、企業収益は不安定性が高まり、スタンダード・アンド・プアーズ500の利益成長率の前年比率は、ここ40年間で約50%も上昇している。しかも、積極的に利益管理したにもかかわらず、である。

 そして、業績の落ち込みが全体に蔓延しつつある。フォーチュン500のうち、5年間で純利益の50%減を経験した企業について調べたところ、1973~77年で、毎年平均37社がこのような減益に陥ったか、あるいはその渦中にあった。

 とはいえ、93~97年では、この数字は84社、つまり2倍以上に増加していた。しかもこの間アメリカは、アメリカ現代史上、最長の好況の真っただなかにあったのである。

 いまでは長年にわたって成功を維持してきた企業でさえ、業界平均以上の売上げを出し続けることが難しくなっている。

 94年のベストセラー、『ビジョナリー・カンパニー』のなかで、著者のジェームズ・コリンズとジェリー・ポラスは、50年代から90年代にわたって常に業界平均以上の業績を上げてきた企業のなかから「先見の明に長けた企業」を18社選び出している。

 ところが、ここ10年間の株価を見てみると、ダウ平均の上昇率を上回っているのは18社のうち、わずかに6社だけである。

 残りの12社──そこには、ウォルト・ディズニー、モトローラ、フォード・モーター、ノードストローム、ソニー、ヒューレット・パッカード(HP)も含まれる──の業績は明らかに「大変よい」から「普通」へと転落している。どう考えても、これほど成功が壊れやすい時代はなかった。

 これほどの動乱期でなければ、既存企業はモメンタムというはずみ車によって成功を維持できたはずである。