フロントラインワーカーはコストではなく資産である
筆者はメドトロニックのCEOを務めていた頃、自分の時間を30/30/30/10の割合で配分するという目標を設定した。30%を顧客と、30%を最前線で働く従業員と、30%を経営幹部たちと、10%を外部関係者と過ごすという意味である。このようなCEOは異端だった。
ハーバード・ビジネス・スクール教授のマイケル・ポーターと前ハーバード・ビジネス・スクール学長のニティン・ノーリアが実施したCEOの時間の使い方に関する詳細な研究[注]によると、CEOが最前線のチームと過ごす時間は平均でわずか6%、顧客とはたったの3%で、72%を会議に費やしていた。同研究は「CEOは、社員が直面する現実をまったく見ないまま、幻想をもとに経営の舵を取るリスクと背中合わせである」とし、「一般社員や現場業務に精通した社外の関係者と接することは、(中略)自社や業界の実情に関して信頼に足る情報を得るための、かけがえのない方法である」と指摘する。
新型コロナウイルス感染症との2年を超える戦いは、経済を機能させるうえで、最前線で働くフロントラインワーカーがいかに大切な存在か浮き彫りにした。しかし、多くの経営幹部はそのような教訓をまだ得ていない。