需要に供給が追いつかない専門職

 今日(1950年代)の労働人口のなかで、最も急速に増えているのが専門職である。

 第2次世界大戦が終わった時、アメリカでは75の企業が、100人以上の専門職を抱える大規模な研究所を所有していた。当時、これは「戦時下の超過利潤税の還付金のおかげで拍車がかかった一時的な現象」といわれた。しかし、5年後の1950年、朝鮮戦争が勃発した時、このような大規模研究所を有する企業の数はほぼ2倍に増えていた。

 さらに注目すべきは、中小企業も相当数の専門職を雇い始めたことである。私が知る某企業では、第2次世界大戦前には1人しかいなかった設計エンジニアを8人に増やした。そのおかげと言ってよいのだろうが、戦後彼らは大成功を収めることとなった。

 現在アメリカには、企業内研究所が、科学に関するものだけに限っても約3000ある。また、専門職が雇用される領域も確実に広がっている。

 ほとんどの経営者と一般従業員にすれば、専門職とはいまだ研究者か、化学者を意味する。しかしここ数年の間に、物理学者が産業界で華々しいデビューを飾ったように、生物学者、地勢学者なども含め、現在企業で働く自然科学者の数は数千人に上る。しかも、経済学者、統計学者、心理学者の数は少なく見積もっても数百人規模に増えており、弁護士については言うまでもない。

 しかし、それでも現在のアメリカで最も不足している人材は専門職であり、当面、需要に供給が追いつくことはないだろう。

 ただし、朝鮮半島の情勢や国防計画の要請ゆえ専門職への需要が急増したことが慢性的不足の理由ではない。その原因は、このように政府部門のみならず、同じく産業界でも、専門職への需要が飛躍的に高まっていることにある。しかもタイミングの悪いことに、30年代の出生率が低水準だったため、専門教育を受けた学生の数が大きく減少している時期でもある。

 そもそもこれらの問題以前に、社会が必要とするあらゆる専門職を輩出する力量が、はたしてアメリカの大学に備わっているのかという疑問もある。最近、医学部の設備不足の問題が大きく報道されたが、これは氷山の一角かもしれない。

 このような状況を鑑みれば、産業界は貴重な専門職を厚遇しているに違いないと考えるのも自然といえよう。ところが、専門職の意識調査によると、彼らの士気は何とも低いという。