急場の応急措置では問題は解決されない

 企業では、さまざまな問題が次々に起こり、これに対処する時間が足りないという状況が常態化している。些末な問題が放置されるのならまだしも、最悪の場合、その場しのぎの対応が慢性化して、本来業務の経営資源まで食いつぶしてしまう。

 複雑な研究開発プロセスや製造プロセスを抱える企業は、とりわけ破壊的なその場しのぎ症候群のえじきとなりやすい。マネジャーもエンジニアも、矢継ぎ早に起こる問題に追われ、一つの仕事をやり終える間もなく、次の問題が発生する。真剣に問題を解決する気持ちはあっても、急場の応急措置で済ませるしかなくなるのだ。

 生産性も著しく低下するだろう。マネジメントの仕事は、疲れた社員をどこに割り振るか、起きたばかりの問題のどれを放置しておくべきかを決める、曲芸じみたものになり下がってしまう。

 我々は長年にわたって、同僚であった故ラマチャンドラン・ジャイクマール教授と共に、製造プロセス、新製品開発プロセスにおけるその場しのぎについて観察してきた。実際、我々が研究成果を説明し始めると、だれにでもすぐ話が通じる。ほとんどの人が「自分の仕事もまさにそうだ」とうなずくのだ。

 しかしながら、その場しのぎ症候群については、これまでわずかな例外を除き、組織論のテーマに上がることはなかった[注1]。しかし、このテーマはもっと注目に値する現象である。実際、複雑で、変更の多いプロセスを処理しなければならないマネジャーにとって、その場しのぎ症候群は深刻な問題の一つになっている。

 我々が観察したところによれば、その場しのぎ症候群は、いくつかの症状の集合体と定義できる。以下のうち、3つ以上の症状が見られたら、あなたの部署はその場しのぎ症候群に陥っている。

 ●すべての問題を解決するだけの時間がない

 エンジニア、マネジャー、知識労働者など、スタッフの問題解決力を超えて、発生する問題のほうが多い。