性別による中年期の差別
中年期は働き盛り、と言われているが、今回の調査では、40歳から60歳の女性も、若年者や高齢者の女性と似たような目に遭っていた。
ある大学の指導者は、「家庭での責任が重く、更年期が近い」という理由で、人材選定委員会が40代後半の女性を採用しなかったと述べている。他にも、「更年期障害があり、管理が難しいかもしれない」という理由で、50代の女性の採用を断った選定委員会や、「50代や60代の女性は『良い年の取り方をしていない』かもしれないし、『活力があるように見えない』と判断した選定委員会もあった。「でも結局、同じ年代の男性が採用されているのです」
ある弁護士は、業界における「適齢なし」の偏見の問題を以下のように総括した。
「私たち女性はまず、責任者や監督者になるには若すぎると言われます。これは30代半ばから後半まで続きますが、男性はそのようなことはありません(おそらく、私たちが子どもを持たないことを確認したいのでしょう)。その時期が過ぎると、一転して年寄り扱いです。新しいことはもう何もさせてくれません。この時期も同じで、男性なら同じ年齢でもまだ『十分若い』と見なされます。(中略)女性は若すぎるか年を取り過ぎているかのどちらかしかなく、出産や育児で仕事から離れることがなくても、女性には最盛期というものがないのです」
筆者らの調査から、女性がリーダーになるための適性年齢は存在しないことがわかった。女性に真剣に取り合わず、意見を軽んじ、採用せず昇進させないための言いわけには、常に「年齢」が使われている。女性一人ひとりは、自分がふさわしい年齢ではないと考えているかもしれないが、データからは明白なパターンが見られる。どの年齢でも上司や同僚から、「評価が低い」「指導的立場にふさわしくない」などの烙印を押されうるのだ。
職場におけエイジダイバーシティは、組織のパフォーマンスを向上させ、(見た目の年齢を含む)年齢差別は、仕事への満足度やエンゲージメントを低下させる。ジェンダーダイバーシティも同様に重要である。多様性の高い経営陣を擁する組織は、特に危機的な状況において、相対的に業績が高く、収入が多く、離職率が低い。企業にとってのメリットは明らかであり、後は企業のリーダーが力をそそぐかどうかにかかっている。
しかし、心配することはない。リーダーは次の実践的ステップを踏めば、性別による「適齢なし」の偏見を解消することが可能だ。
性別による年齢差別を解消する方法
年齢に関する偏見を認識する
問題を解決するには、問題の存在を認めなければならない。職場の多様性、公平性、包摂(DEI)の取り組みでは、性差別や人種差別に焦点が当てられ、年齢差別にはほとんど注意が向けられていない。他の形態の差別と同様に、性別と年齢に関する偏見に関しても、全従業員に研修を受けさせるべきである。
年齢に関する偏見について、「グレーゾーン」も含め、事例を用いてインタラクティブに学ばせ、高齢になると意欲や敏捷性、学習能力が減退するという誤った固定観念の解消に努める。また、社内SNSを活用し、感情と事実の両方に沿ったメッセージを使って、年齢差別について周知するのもよいだろう。問題が無視されなくなれば、必要な改善が行えるようになる。
「ルッキズム」を解消する
性別による年齢差別のほとんどは、外見や容姿の社会的価値の大きさに由来する。若く魅力的に見られたいという絶えざるプレッシャーは、一般的に男性よりも女性に大きな影響を与えるものだ。DEI研修にルッキズム(容姿に関する偏見や差別)を盛り込み、採用、昇進、業績評価の隠れた尺度として使われないようにする。
誰が持っているかにかかわらず、スキルを重視する
若い女性は、経験不足と見なされるため、意図的かどうかにかかわらず、活躍の場が限られることが多い。中年の女性に対しては、管理が難しいとか、家庭で担うべき責任が多いという固定観念がある。高齢の女性は、組織への帰属意識や生産性が低い、昇進できないといった見方が足枷になることが多い。こうした誤った認識が問題を永続化させている。リーダーは、採用、昇進の判断、育成する新しいチームメンバーを迎える際などに、年齢でも、勤続年数や外見でもなく、女性一人ひとりのスキルに注目すべきである。
コラボレーションの場をつくる
多世代や男女でチームを構成したり、仕事上の関係を持たせたりして、互いから学び合い、協力して解決策を考える場を提供する。中高年社員には長年の経験があり、若手社員には新しい時代に育った視点がある。
最近の調査によれば、Z世代が職場に最も期待することの一つがメンターとの関係であり、自分に関心を持ってくれる年上の社員とのつながりを強く望んでいる。女性は、非公式なネットワークやイベントから排除されているため、仕事での成長を手助けしてくれる人脈に欠けることが極めて多い。若い女性社員を年上のメンターやスポンサーと意図的にペアリングすると、女性社員の学習とキャリアアップを助け、ひいては会社の業績向上につなげることができる。
調査結果は明らかである。どの年齢でも、女性は「ふさわしくない年齢」とみなされ、それによって女性の能力が疑われ、リーダーとしての適性が問われる。しかし、女性の年齢をマイナスにとらえることをやめることはできる。それは、女性だけでなく組織全体に資することである。
"Women in Leadership Face Ageism at Every Age," HBR.org, June 16, 2023.