予防医療や個別化医療をデータドリブンで進化させる

西上 データをつなげることで社会的インパクトの大きいアウトカム(成果)を生み出していくことは、ライフサイエンスとヘルスケアに関わるプレーヤーの共通認識になっています。その状況を踏まえて、古田さんがお考えになっている未来像についてお聞かせください。

古田 ライフサイエンスとヘルスケアは元来、データドリブンで進んでいくものです。これらが増大するコンピューティングパワーによって強化されることで、予防医療や個別化医療も夢ではなくなります。

 たとえば、タケダは東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)と医薬品企業が産学連携で発足したコンソーシアムに参画しており、ToMMoが有する計10万人分の全ゲノム解析データを基にしたデータベース研究などを進めています。欧米のゲノム情報基盤を活用した創薬研究にはすでに取り組んできましたが、日本人を含むより多様な全ゲノム情報の活用が進めば、革新的な医薬品開発と予防医療、そして患者さん一人ひとりの体質や病態などに合った個別化医療が飛躍的に発展するはずです。

 予防医療や個別化医療がどういう効果を上げたかというデータが蓄積されていくことで、アウトカムに基づく医療予算の配分が可能になり、医療費を効果的に管理できるようになります。つまり、先ほど触れたヘルスケアの質と国民皆保険の持続可能性の向上を実現できるわけです。

西上 患者中心のヘルスケアと社会全体のウェルビーイングを同時に実現することができるということですね。

古田 ただ、それはタケダだけで実現できる話ではありません。データを集めるにしても、それを活用して社会課題を解決していくにも、公共セクターやアカデミア、市民、民間企業など、より多くのステークホルダーと協力していくことで、実現可能性が高まります。私たちは率先して仲間を募り、力を合わせてやっていきたいと思います。

長川 誰が旗を振るかによって、志の高い仲間がどれだけ集まるかが違ってきます。旗を振る人の実績や信頼、パッションがないと共感、共鳴を生むのは難しく、仲間が集まらない可能性もあります。

 タケダの実績と信頼、そして周りの人の意見をフラットに聞き、その知識や経験を活かす古田さんのリーダーシップスタイルがあれば、世の中の常識を塗り替えるような新しいエコシステムのモデルや社会課題解決のアプローチが生まれるのではないかと期待します。