3. 問題への誘導:最新情報を提供し、フィードバックを集める

 問題が特定され精査された後、データアナリストの多くは隔離状態に入り、解決策を見つけた時にようやく姿を現す。このやり方には大いに問題がある。最大の効果を上げるためには、分析のプロセスで十分な情報共有と期待の設定が求められる。筆者はこれを、問題への誘導と呼んでいる。

 データリーダーは、データチームが分析の中間結果を事業チームに提供することにさらに慣れるよう後押しする必要がある。それにより、毎回のやり取りはフィードバックを集める機会となる。たとえば、「これらの初期結果は、事業チームにとって興味深いものですか」「我々は用語を正しく定義していますか」といった具合だ。プロジェクトが完了するまで、最新情報が提供されるたびに分析結果がまとめられ、逐次更新されていく。

 このアプローチは、一部のデータサイエンティストが好むやり方とは相容れない。彼らは時として、自分のモデルと創造的な問題解決手法に夢中になり、大発表がしたくてたまらなくなる。

 だが、「大発表」は悪しき慣行であり、逆効果になりかねない。最終プレゼンでのサプライズが大きすぎると、聞き手は身構えてしまう可能性がある。なぜなら、人は予想外の結果に遭遇すると、その根底にあるデータと手法を疑問視し始める場合が多々あるからだ。

 すべてのデータモデルは前提条件を必要とする(欠損データにどう対処するのか、異常値をどう処理するのか、など)。分析に積極的に取り組んでいるデータチームが、前提条件の開示と議論を事前に行わずに最後に回す場合、事業チームは疑問を積み重ね、欠点をあら探しするだろう。反対に事業チームを意思決定の過程に引き込めば、彼らは結果を受け入れて信頼してくれるはずだ。

 多くの事業リーダーは、最良の最終データ成果物は驚かされるようなものではないと筆者に語っている。彼らは最初からデータチームと緊密に連携しており、最終的な成果物やプレゼンは現在までの取り組みの集大成にすぎない。問題に誘導して賛同を得るには、データサイエンティストに求められる難しい選択を明示して協働する必要がある。

 要点:問題への誘導とは、定期的に最新情報を提供して事業チームからフィードバックを集めるプロセスを設けることだ。この分野に秀でたデータサイエンティストやデータチームのリーダーは、最終成果物が事業チームの要求を──驚かせることなく──満たすよう万全を期すための、率直な議論を奨励し促進することができる。

4. ソリューションの翻訳:聞き手にわかる言葉で話す

 この段階で、問題からソリューションへと移行する。その成否は、データリーダーとチームが1~3のステップをどれほどうまく実行したかによって決まる。データチームは最終的な答えを決めるだけでなく、理解可能な、ひいては実行可能なソリューションを提供しなくてはならない。

 これは、単にデータをチャートやその他のビジュアルで表示することではない。ソリューションがデータからの洞察であれ、モデルで推奨された一連の新たな行動方針であれ、それを事業チームにとって理解可能な言葉で伝える必要がある。

 筆者が推奨する手段の一つは、解決すべき問題の最も重要な要素を2ページにまとめたデータ分析メモだ。データチームが作成しがちな長大なリポートに比べればなおのこと、2ページはかなり簡略と思えるかもしれないが、この秘密兵器の威力は簡潔さにこそある。

 2ページという制限によって、データ分析の詳細を長々と述べたくなる衝動を抑えることができ、推奨事項とその根拠に焦点を絞りやすくなる。短いメモを提唱するのは、もちろん筆者だけではない。アマゾン・ドットコム創業者のジェフ・ベゾスは幹部らに対し、アイデアをパワーポイントによるプレゼンではなく、簡単に理解し議論できる6ページのメモで提示するよう義務づけた。

 要点:ソリューションの翻訳においてデータリーダーに求められるのは、一歩引いた視点から、自分たちの分析と推奨によって最大の効果をもたらす方法を検討することだ。この分野に秀でたデータリーダーは、複雑さに屈することなくシンプルな言葉を使うことで、エレベータースピーチと同等に説得力があり理解しやすい形でソリューションを説明し、事業リーダーの関心を引きつけることができる。

 データとアナリティクスがますますビジネスの意思決定とソリューションに組み込まれる中、データチームは単に割り当てられた問題の解決に留まっていてはならない。むしろデータリーダーとチームは、「コラボレーションとコミュニケーション」という言葉を強く意識する必要がある。

 すなわち、真の問題を発見し、問題の性質と重要性を明らかにし、定期的な最新情報の提供を通じてプロセスを誘導し、真に効果をもたらすソリューションの提供と翻訳ができるよう、より幅広い役割に熟達することが求められるのだ。


"4 Skills the Next Generation of Data Scientists Needs to Develop," HBR.org, September 08, 2023.