リアルタイムで集う会議を最大限に活かす
メンバーがリアルタイムで集う会議は、やるべきことを進め、ボトルネックを解消し、知識を共有するうえで非常に重要なものである。しかし、特にチームメンバー全員が対面で行うわけではないハイブリッドチームの会議は、その数が多すぎたり、上手に進行できなかったりすると、不満や憤りの原因となる場合がある。ハイブリッド会議における相互作用のパターン分析によれば、技術的な問題がコミュニケーションやチームダイナミクスの妨げになる場合が多いが、公平性が保たれるように会議を設計すること──話者交代のシステムなど──で、これらに対処できると提案している。
会議がチームメンバー間の亀裂を生むことなく、プロジェクトの接着剤の役割を果たすようにする方法は、以下の通りである。
会議はデフォルトにするのではなく、意図的に行う
チーム全員でキックオフミーティングを開き、その後は会議が必要になった時に備えて、メンバーに少なくとも1~2週間おきに決まった時間をブロックしてもらい、その時間をあらかじめ確保しておく。ただし、進捗報告に関しては、ミーティング以外でもメールやプロジェクトダッシュボード、グループメッセージで行うようにする。そうすると、タスクの進捗をチェックするためだけにメンバーを会議に招集する必要がなくなるうえ、進捗の記録が残る。
そうしたアップデートを各自が責任を持って読むように、チームスケジュールに会議のない「侵すべからざる時間帯」を設けたうえで、メンバーに何らかのアクションを返すよう求める。たとえば、毎日午後4時から4時30分までをチームのアップデートを読む時間に設定し、4時30分までに他のメンバーに対する質問や提案、感謝の言葉を投稿させるといった方法がある。
会議の公平性を保つためのツールを活用する
ハイブリッド会議でリモート参加者が不利にならないようにするには、発言したい時に口を挟む方式ではなく、各人に意見を求める時間を組み込んでおく。また、ハイブリッド会議における積極参加と包摂性を高めるために、デジタルホワイトボードなどの機能を導入するなど、ツールキットの拡充を検討する。
カナダのリモートセンシングセンター(CCRS)で社内ビジネスコンサルタントを務めるエミリー・ピックネルが使ったこの方法のおかげで、ノースウェスト準州にいるスタッフは、オタワにいるチームメンバーと同じように効果的に会議に参加できた。オンラインホワイトボードを使うことで、場所の違いがなくなっただけでなく、口頭よりも視覚的なコミュニケーションが得意なメンバーのエンゲージメントを高めることができたという。
1on1の力を利用する
リアルタイムのワークセッションに毎回メンバー全員が必要なわけではない。場合によって、一人に話をしたほうが効率的にグループに情報を伝達できることもある。
スティーブン・ヒギンボサムは、過去27回失敗している大規模なインフラプロジェクトを引き受けた時、個人個人とのリアルタイムのミーティングがプロジェクトを進めるカギになったと言う。チームのプロジェクト進捗管理者が、リモートのメンバーと定期的に1on1を行い、彼らのタスク完了までの所要期間をつど確認することによって、プロジェクト予算を綿密に管理し、実際にプロジェクトを完遂に導いた。その結果、会社は年間8000万ドルのコストを節減した。
会議を関係構築の場ととらえる
誰もが多忙ないま、会議はできるだけ効率的にこなしたいと思うものであり、それが本当に必要な時もある。営業人材紹介会社のザック・マトラクスは、ある非営利団体と仕事をした時のことが印象に残っているという。会議では、時間監視役が任命され、その人は事前に作成されたアジェンダの時間配分通りに会議を進行する役目を負っていた。その役割を交代で行うことで、一人が常に悪者にならずに済んだ。
だが基本的に、リアルタイムでの共同作業は、チームメンバー間、特にリモート組とオフィス組との間の人間関係や信頼関係を構築する重要な機会である。そのため、会議では交流の時間を設け、さまざまな方法でつながりを築けるように、テーマから外れた会話もできるような余裕を設けるべきである。
絆を強めるイベントを特別に予定するのではなく、会議の中でつながりを深める機会を探る。たとえば、画面に犬や猫が映り込んだら、そのペットの名前を尋ねる。自分の考えを言いかけて、話が脱線したことを詫びる人がいたら、最後まで考えを聞かせてくれるように促すなどだ。
メディアアーティストでありプロデューサーでもあるエボ・ヘイニングは、クリエイティブなプロジェクトで協働するハイブリッドチームを招集することが多い。彼女は、メンバーのオフラインや仕事以外での興味について、カメラにヒントが映っていないか探すようにしている。それは、短時間のミーティングを頻回に開くのではなく、時々長めのミーティング(45~75分)を開きたいという意向をチームに伝えておくことで実現しやすい(ただし、わざとらしいチームビルディングアクティビティは避ける。調査によると、強制的な絆づくりを嫌う人が多い)。
ハイブリッドプロジェクトもしょせんプロジェクト
以上の方法のいくつかは、どのプロジェクトにも活かせる。そう感じたなら、それが正解だ。結局のところ、効果的なプロジェクト運営に関する課題は、働く場所(グローバル企業の各拠点など)や利用できるリソースの違いがある中で起こる些細な事柄や人の反応に、さらに配慮するよう私たちに求めているということだけだ。有能なハイブリッドプロジェクトマネジャーになれれば、よりいっそう有能なプロジェクトマネジャーになれるに違いない。
"3 Project Management Strategies for a Hybrid Workplace," HBR.org, October 12, 2023.