会社の成長と個人の成長を両立させる
編集部(以下色文字):コロナ禍が収束に向かい始めた頃から、転職や独立を決断する人たちが増え、人材流動性が急速に高まったといわれています。コロナ禍を経て、企業はどのような変化に直面しているのか。樋口さんの考えをお聞かせください。
樋口(以下略):コロナ禍を通じて、自分の人生について考える機会を得た人が増えたことは確かだと思います。米国がグレート・レジグネーション(大退職時代)を迎えた要因は、コロナ禍でみずからの価値観を問い直し、「この会社で仕事を続けるべきなのか」と考え始めたからだといわれますよね。実際に転職した人は多いですし、一度辞めてから同じ会社に戻った人もいると聞いています。
ワークスタイルにも変化が起き、在宅勤務やリモートワークが普及しました。そして、新しい働き方がもたらした利点だけでなく、対面のコミュニケーションが失われたことによる欠点も明らかになりました。にもかかわらず、それが既得権のように扱われている状況には疑問を感じます。フェース・トゥ・フェースの重要性を再認識しながら、従業員に「オフィスに戻りなさい」と言えない会社が多いのではないでしょうか。