企業がパーパスを持つことで、仕事に給与以上の価値を生み出す
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サマリー:今日のグローバルなデジタル経済では、さまざまなステークホルダーが複雑なシステムの中で関与し合っている。従業員のモチベーションを維持し、顧客を感動させ、そして市民社会や政府の要求にも目を向けなければなら... もっと見るない。組織がパーパスを持つことは、この複雑なシステム内でステークホルダーの活動を調整するのに役立つ。本稿では、なぜパーパスがこれらのステークホルダーの複雑な関係を調和させることができるのか説明している。 閉じる

働き手を怠けさせないために

 長年にわたり、経営理論の多くは、プリンシパル(依頼主)とエージェント(代理人)の関係というモデルを土台にしてきた。プリンシパルは、エージェントが何らかの役割を果たすことを期待するが、エージェントの仕事ぶりを常に監視したり評価したりできるとは限らない。それはつまり、割り当てられた課題を実行するか、怠けるかは、エージェント次第ということだ。

 そこで、このような「エージェンシー問題」を解決するために、研究者たちは企業の株主に対して、株主価値を基準にしてその会社の幹部たちにインセンティブを与えることを推奨してきた。このアプローチが実践されると、企業の幹部たちは、重要な業績指標についてマネジャーたちに数字で責任を持たせることができる。それを通じて、株主価値を高めさせようというわけだ。

 この場合、社内でパーパスに関する意識が共有されていれば、雇用契約で明示されていなくても、パーパスがマネジャーたちにとって次にどのように行動すべきかを示す指針や推進力となる。たとえば、マネジャーたちはパーパスを基準に、予想外の出来事にどのように対処するか、改善のためのアイデアを提供するか、どれくらい残業するか、手ごわい問題を解決するためにどれくらい頑張るかといったことを判断する。