私たちのパーパスはチャンスを拡大し、変化を求めているか

 優れたパーパスは、あなたの会社のチャンスをいちだんと拡大するだけでなく、困難な選択や変革を強いる。これまでのやり方を改めるよう要求しないパーパスなど、どのような意味があるだろう。組織がパーパスを練ることをサポートする時、筆者らは将来正しいアクションを促すか、それとも商業的に非現実的かをかなりの時間をかけて見極める。

 筆者らが「ビン、バンク、ビルド作業」と呼ぶプロセスでは、パーパスが要求することに理想主義的に身を委ね、それを実現するためには、現在のビジネスのどの側面を捨てて(ビン)、どこを維持し(バンク)、あるいは未来に向けて構築する(ビルド)かをチームに検討してもらう。その答えは多岐にわたり、さまざまな事業、イノベーション、プロセス、人材、文化、働き方、そして育てるべき能力に関係する場合がある。

 こうした難しい「ビン、バンク、ビルド」の選択をするために、チームは商業面での理想にこだわる必要はない。ここは理想論と現実のオペレーションが融合する場面だ。成長を促進する側面を捨ててしまえば、ビジネスが存在しなくなり、パーパスを実現することすらできなくなる。パーパスに反するプロダクトやサービスを維持したり、構築したりすれば、冷笑的な反応や、よけいな問題や、会社の評判にダメージを生じさせるおそれがある。こうした選択は、業績に穴を空けるものであってはならない。求められる変革は、少なくとも、捨てたものの代わりとなる新たな収益を生み出すことができるし、そうであるべきだ。

そのパーパスは長期的な計画と現在の戦略を統合しているか

 幅広い領域をカバーするパーパスを策定するためには、慎重な計画立案と、段階的な変革、そして長期な計画と現在の事業戦略との統合が必要だ。ギャラップの2021年の調査結果によると、リーダーが自社の方向性を明確に示していると感じる従業員は22%しかいなかった。パーパスを使って、現在の事業戦略と長期計画を推進しなければ、いずれ明らかにばらばらになるだろう。そうなれば、「どうすればさらに儲かるか」が事業戦略と見なされ、「どうすれば儲けに満足を感じられるか」がパーパスと見なされるだろう。このような組織の方向性は、よく言っても不明瞭だ。

 パーパス主導の組織は、パーパスに沿った事業目標と、成長とインパクトを共存させる戦略を持つ。したがって、そのチームはどのような成果物が求められるかを明確に把握しており、コア事業戦略にいちだんと深くコミットし、その両方をより効果的に実行できる。

どうすればパーパスに基づいて日々の決断ができ、進歩を祝えるか

 一般的にリーダーは、アクションを好む傾向がある。忙しいスケジュールの合間にパーパスを考え直してほしいと言われたら、「考え直しか」とこっそり舌打ちをするリーダーが多いかもしれない。しかし現実主義的な側面を抑えて、より理想主義的になることが有益な場合もある。ほんの一拍ペースを落とすだけで、成長を加速させる巨大な配当を得られる場合もあるのだ。会社のパーパスにチームを完全に関与させる作業は、まさにそうした瞬間の一つである。時間をかけて、ていねいにやったほうがよい。

 あなたが定めた会社のパーパスにチームが尽くすことを求めるなら、それについて本音でオープンに意見を交換してもらう必要がある。ハイレベルな思考や計画について、彼らにチェックしてもらおう。一方的なコミュニケーションでは意味がない。

 パーパスにコミットする前に、チームは次のことを知りたいはずだ。

・なぜいまこれをやるのか。変化を起こすべき率直な理由は何か。

・それは私たちが日々行っていること、現在の戦略、日々の意思決定とつながりがあるのか。

・リーダーであるあなたは、それが正しいと本当に考えているのか。

 これらの問いに対する回答を得て初めて、あなたのチームは、パーパスが自分自身や自分の仕事にどのようなインパクトを与えるか、深く考えるようになる。あなたと一緒にパーパスの要求に取り組み始める。全員がパーパスにつながりを感じるわけではない。それはよい兆しだ。あなたが会社について、シャープな方向性を定めたことを意味するのだから。

 チーム内には、明確な理解が得られたり、不同意や反対意見、興奮、不安が生じる瞬間があるだろう。それはあなたがリーダーとしてパーパスを定める時にたどったものと同じ感情の変化のプロセスだ。その旅路の話をオープンに共有して、議論を呼びかければ、そのパーパスがリーダーだけのものから、会社全体のものへとシフトしていくだろう。

 パーパスに基づいてチームを鼓舞する秘訣は、うるさく唱え、退屈を恐れず、律儀になることだ。次の提案をしたい。

・しつこく言葉にこだわる。あなたは一語一語を懸命に考えてパーパスステートメントを完成させたのだから、そのパーパスを使ってあらゆる決定をサポートしよう。

・あえて退屈になり、パーパスを繰り返そう。一貫性と反復がカギだ。チームを道に迷わせてはいけない。長期的な計画と現在の戦略の統合を維持して、この2つの間にパーパスがあることをチームに示そう。

・大きな成功をした時だけでなく、あらゆる小さな進捗も見逃さず、律儀に祝福しよう。そして、挫折しても、同じくらいの進歩があること覚えておこう。

 あなたのパーパスは、社内で日々生き、人々がそれを内面化し、実践するようになった時に初めて、あなたの会社を本当に動かし始める。


"To Craft a Purpose That Motivates Your Team, Balance Pragmatism and Idealism," HBR.org, December 01, 2023.