リスクを取って、すでに利益を生んでいる事業のアセットを軽くし、優秀な人財を新規事業に移すなど、組み換えて、新しい形にする。「それはマラソン選手が全速力で走っているところに外科手術を施すようなもので、大変な痛みを伴います」

 3つ目に期待されるのが、コンサルが変革のこのつらいフェーズにおいて、カタリスト(触媒)、チェンジエージェントの役割を担うことである。

 ただし、アセットの組み直しで痛みを引き受ける既存事業への好影響もある。既存事業で“たくみ”(匠)のように人の何倍もの成果を出している優秀な人財が抜けると、その事業が回らなくなり、デジタル化を含んだ仕事の“しくみ”(仕組み)化をせざるをえなくなる。これがチャンスなのだ。

「日本企業がしくみ化を苦手とするのは、人財が優秀でシステム化できないから」。人がいなくなり、否応なくしくみ化が進めば、既存事業も活性化する。

「しかもコンサルは言わば『しくみ化』のプロです。人の持つノウハウのしくみ化もそうですが、現場で新しいことを試し、筋のいいものを目利きして、型に落とすことで、『たくみの技』がしくみとして企業にどんどんビルトインされる。一人のたくみの技を型に落とす、『型化』していくことは、個別の事業をつくるよりも重要で、ここにコンサルの力が活きるのです」

 翻って、企業がこうしたコンサルに依頼する時の注意点は何か。

「第1に、コンサルのブランドではなく、担当者個人の資質とコミットメントを見極めること。第2に、同じコンサルにすべてを任せるのではなく、変革のテーマやステージごとに最適なコンサルを使い分けることです」

 得意領域はそのコンサルが関わった過去の事例を見ればわかる。フィーの取り方も参考になるという。初期ステージは薄くし、成果が出てからフィーを厚くする価格体系なら、実績があると見てよい。企業にはこのようにコンサルを選ぶリテラシーも必要なのだ。

「最後に大切なのが、他律(委託)と自律(型化)を両立する動的組織能力です」

 外注しっぱなしではなく、コンサル離れできるように、コンサルの技を盗み、移植して自分事化する。実際に大きな進化を遂げる企業は、コンサルのノウハウを吸い尽くすという。

 企業がみずから学習する組織として、このように適切に伴走者としてのコンサルの協力を得られれば、企業の変革にも新たな光明が見えてきそうだ。