内向的だが情熱を秘めた人を伸ばすために

 一連の発見を踏まえれば、マネジャーが外向的な性格を情熱の表れと誤解してしまうのも無理はない。外向的な人の情熱表現は、内向的な人よりもはるかに明白な傾向があるためだ。

 とはいえ、重要なのは、マネジャーがこうした偏見に対処し、内向的な従業員に悪影響が生じないよう積極的な対策を講じることである。マネジャーが取るべき戦術的なステップを具体的に紹介しよう。

1. 部下の情熱の表現方法を知る

 まず、部下とオープンにコミュニケーションを取り、彼らがどのような形で情熱を表現したいと思っているかを話してほしいと働きかけよう。チーム全員が同じ方法で情熱を表現するものだと決めつけることなく、時間をかけて、それぞれにとっての最も自然な行動や表現方法を理解しよう。

 こうした対話の際に重要なのは、批判的な反応を避けることだ。相手のスタイルは、あなたにとっては直感的に理解しやすいものでないかもしれないが、彼らの表現方法を理解し、ステレオタイプ的な期待に沿っていなくても、その情熱を認めることが、上司としてのあなたの役割である。

2. 情熱を表現する新たな方法を協力して見つける

 チームの情熱の表現方法について知る努力を重ねたら、次は部下の表現とあなたの認識のギャップを埋めるために互いに協力するステップが必要だ。たとえば、表立って情熱を表現するのが苦手だと話してくれた従業員がいたとしよう。彼らは書面の報告書や一対一でのディスカッションなど、他のコミュニケーション手段を通じて献身的にコミットする姿勢を示せるかもしれない。

 また、あなたやチームを成功に導く可能性が最も高い仕事の進め方を、協力して見極めることも可能だ。たとえば、内向的な部下がいるのであれば、ミーティングや即席の会話の回数を減らし、代わりに、中断されずに集中でき、単独で進められる仕事のために長めの時間枠を確保するといい。マネジャーは情熱的な従業員についての自身のイメージに合わせるよう従業員に圧力をかけるのではなく、彼らと協力して、全員に適した情熱の表現方法を探すべきだ。

3. 情熱的なパフォーマンス──パフォーマンス用の情熱ではない──を評価する

 チームで協力して情熱の表現方法を見つけたら、最後のステップは真の情熱に報いること──外面的な行動だけが情熱を示す唯一の方法だという偏った思い込みに囚われることなく、真の情熱を評価できるかどうかは、あなた次第だ。パフォーマンス評価であれ、人気の高い仕事の割り振りや昇進や昇給、ボーナスの決定であれ、マネジャーは実績に応じて報酬を配分するよう努めなければならない。

 この点が特に重要なのは、パフォーマンス用の情熱表現を奨励する態度が、単に外向的な人に有利に働くだけでなく、従業員や組織に悪影響をもたらす場合もあるためだ。たとえば、筆者らの研究に参加した多くの従業員が、長時間働いたり、期待以上の仕事をすることが情熱を示すサインだと考えていた。しかし筆者らの先行研究では、そうした行動が実際には燃え尽きや疲労を引き起こすおそれがあることが示されている。したがって、マネジャーは従業員がこうした逆効果の行動に走らないよう留意し、パフォーマンス向上につながるリアルな情熱に基づいた行動を評価するよう心掛けることが重要だ。

内向的な人が情熱を表現する方法

 もちろん、ほかのあらゆる偏見と同じく、情熱を示す行動についてのマネジャーの潜在意識下での思い込みも、完全に取り除くのは難しいだろう。では、根深い偏見が残る中、内向的な従業員が状況に適応して成功するにはどうすればよいのだろうか。

 まず、内向的な人は、自身の内面の経験と、外部から認識される情熱の間にギャップがある。そこで筆者らは、そのギャップを埋めるための戦術的なステップを提示している。たとえば、会議で積極的に発言する、より活気のあるコミュニケーションスタイルに切り替えるなど、自分にとって自然ではない外向的な行動を意識的に行うことで、内面の情熱が周囲からも見えやすくなる。内向的な性格のスティーブン・スピルバーグは、「自分は内気な人間ではないと周囲に思わせる仮面として、長時間働いている」と語っている。

 ただし同時に、この手の印象操作には代償が伴いかねない。内向的な人が外向的に振る舞うと、感情面の余裕が削がれ、結果的に長期的なパフォーマンスやウェルビーイングに悪影響を及ぼすことが研究で示されている。

 しかも、目に見えやすい形の情熱表現が感情を激しく疲弊させることも、筆者らの分析で明らかになっている。したがって、内向的な従業員は、このアプローチのトレードオフについて注意深くバランスを取り、自分のエネルギーに余裕がある場面でだけ、外向的な情熱表現を行うほうがよさそうだ。

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 NBAの歴代選手の中でもトップクラスのティム・ダンカンは「内向的な一匹狼」と呼ばれ、「自分の情熱を世界と分かち合うことに関心がない」といわれてきた。5度のNBA優勝やオールスターチーム15回選出といった記録を見れば、彼のバスケットボールへの情熱──そして勝利への情熱──は一目瞭然だが、スポーツコメンテーターからは「NBA史上最も過小評価されてきたスーパースター」と呼ばれている。

 世間では、情熱を示す唯一の方法は外向的に振る舞うことだと思われがちだが、それはまったくの誤りだ。それどころか、筆者らの研究が示すように、内向性と情熱はけっして相いれないものではない。

 情熱は常に、目に見えるほど明るく燃えているわけではない。目に見えないからといって、心の中が燃えていないとは限らない。この点を、私たち一人ひとりが認識することが大切だ。


"Stop Assuming Introverts Aren't Passionate About Work," HBR.org, December, 04, 2023.