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イノベーションは事業化まで時間がかかる
入山:吉田(憲一郎・会長 CEO)さんと十時さんの経営体制になられて何年目ですか。
十時:6年目になりました。
入山:経営危機から復活して、2022年度は11兆円を超える過去最高の売上高を記録しました。近年では、「プレイステーション5」やアニメ『鬼滅の刃』が大ヒットし、ミラーレス一眼カメラα(アルファ)もクリエイター中心に広まっています。私自身もソニー製のワイヤレスイヤホンを愛用しており、「イノベーションのソニー復活」ともいわれていますね。十時さんは、いまのソニーグループの状況をどうとらえていますか。
十時:ありがとうございます。ただ、前CEOの平井(一夫・元会長)の経営体制から振り返っても、何か新たな中核事業を生み出したわけではありません。
入山:実は私にもそのイメージがあります。
十時:もともとファウンダーを中心に手掛けてきた事業が中核を占めており、一番新しくて大きくなった事業がゲームです。それも以前からあったものなので、業績に大きな影響を与えたのは、平井が多様な事業で構成される経営チームを本当の意味でチームにしたことと、吉田がポートフォリオ経営[注1]に大きく舵を切ったという2つの流れだと思います。つまり、もともとあったものを見つけて磨き、伸びしろをつくり、時代に合わせて成長させてきたのがこの十数年でした。
入山:ゼロから事業を生み出しているというより、ソニーの中にもともとあったものを経営の力で引き出し、価値を生み出したのが平井さんから吉田さん、十時さんまでの改革だったわけですね。
十時:イノベーションが本当に起きたとすれば、とてもかっこいいですし、世の中の注目を浴びますが、簡単ではありません。変わったと思われた時まで、長く低空飛行をしていた時期があるからです。その低迷期は注目を浴びていないので、急に何か成功したように見えるだけでしょう。