5. 自分の業績リストを簡潔にまとめる

 いよいよ、実際に自己評価シートを執筆する段階だ。膨大な業績のリストの中から、特にインパクトの大きいものを5つまで選ぼう。ここで取り上げる業績はいずれも、自社もしくは部署の目標達成に資するもので、自社の価値観および文化に適合していて、しかも同僚からのフィードバックを反映したものでなくてはならない。もし可能であれば、前の年の成績評価で「要改善」課題と位置づけられていたテーマでの改善や成功についても記そう。

 あなたの会社にいくつかの価値観や文化的規範がある場合は、個々の価値観や文化的規範ごとに、業績を列挙すればよい。そしてそのうえで、いわゆる「STAR法」──状況(Situation)、課題(Task)、行動(Action)、結果(Result)の頭文字を取った言葉だ──を用いて、すべてを簡潔にまとめよう。また、最後に、みずからが学習もしくは成長すべき領域を記すことも忘れてはならない。

 この点を具体的な事例で見てみよう。この会社の価値観は、「直感に基づく意思決定を行うより前に、まずデータドリブンの意思決定を行う」というものだ。

データドリブンの意思決定

状況:私は6月に新製品「アルファ」を市場投入した際に、マーケティングの直接的な担当者を務めた。

課題:セールス部門が理解して実践しやすい革新的なマーケティングキャンペーンをつくり上げ、セールス目標の達成を助けること。

行動

・この新製品の市場投入に向けた戦略をつくった。その戦略の中には、ブランディング、メッセージング、発売に至るまでのロードマップ、成功の度合いを判断するためのKPI(重要業績評価指標)の策定などが含まれる。

・自分のチームに権限を持たせ、チームを率いて28種類のマーケティング資産を保有し、提供した。

・顧客データと過去の新製品発売時の財務データを照らし合わせ、それに基づいてメッセージの発し方を決定し、社内のステークホルダーが全体的なマーケティングプランに沿って行動するように促した。

・主体的にコミュニケーションを行い、社内のいくつもの部署(財務部門、マーケティングオペレーション部門、セールス部門、ブランド戦略部門)の足並みを揃えさせ、一貫したメッセージを打ち出すようにした。

・セールスチームの研修を行い、個々のクライアントの個性に合わせてメッセージングとマーケティングの資産を用いる方法を学ばせた。

・メール、ウェブ、セールスなど、多くのチャネルを通じて、キャンペーンを行った。その際、いっさい問題が発生することはなく、セールス部門および顧客からも好ましいフィードバックを得ることができた。

結果

・新製品「アルファ」のキャンペーンは、スケジュール通りに実行され、予算を超過することもなかった。そして、最初の3カ月間の売上げは、セールス目標を上回っている。

・セールス部門からのフィードバックによると、私は方向転換を主導し、セールス資産に調整を加えて継続的な使用につなげたとのことである。

学習

・計画立案の過程では、すべてのステークホルダーの足並みが揃うように、隔週ではなく毎週会議を行うべきだったかもしれない。もし、隔週の会議の際にオフィスを不在にしているステークホルダーがいれば、その人物は情報を得ないままになってしまうからだ。

・計画立案の初期段階で、メッセージのあり方を検討する会議にセールス部門の上層部を参加させることができなかった。その結果、後でその人たちが修正を要求し、私たちは大慌てで修正作業を行うことになった。次の1年間は、正式な指揮命令権が及ばない人たちにも影響力を及ぼし、初期のブレインストーミングに上級リーダーたちを参加させるために努力する。

* * *

 最後に、自己評価シートで自分の「要改善」領域を挙げるよう求められている場合は、必ず2つ挙げるようにしよう。私たちは誰でも、自分が高いレベルの仕事をしていると思いたい。自分が不完全だと認めるのは難しいものだ。しかし、自分の「要改善」領域を挙げるのは、自分がさらに会社に貢献するためだと理解しよう。それは、あなたの人格や誠実性に問題があることを示すものではないのだ。

 前の年の「要改善」領域でまだ進歩が不十分だと思えば、その領域で引き続き改善を目指すことを考えよう。もし、1年間の経験に基づいた学習を通じて、改善すべき点が見つからなければ、私生活上の改善目標の中で仕事に関わりのあるものを選べばよい。たとえば、公私の境界線をより明確にすること、変化が起きている時により素早く方向転換できるようになることなどでもよいだろう。

 自己評価シートの締めくくりでは、「要改善」領域でマネジャーがあなたを助けるためにどのようなことができるかを書くとよい。それをきっかけにマネジャーとの対話が生まれて、あなたがより大きな成功を収めるためにどのような機会を会社側が提供できるかを話し合えるだろう。


"How to Write an Effective Self-Assessment," HBR.org, December 12, 2023.