金銭的な不安を持つ従業員を企業はどう支援すべきか
llustration by Lena Yokoyama
サマリー:従業員の多くは、経済的苦境に陥っており、業務に支障を来たしている。そうした状況を改善するために、企業は従業員が経済面での不安を解消できる効果的な福利厚生を設計し、筆者が「ファイナンシャル・ヘルス」と呼... もっと見るぶ基盤を整える必要がある。本稿では、従業員のファイナンシャル・ヘルスを高めるために、企業が実践すべき3つのステップを紹介する。 閉じる

従業員の多くが経済的なストレスにさらされている

 気づいていないかもしれないが、あなたの会社の従業員の多くが経済的苦境に陥っている。そして、彼らはあなたの助けを必要としている。

 2022年に全米金融教育基金(NEFE:筆者はこの非営利団体の評議委員を務めている)が行った調査によると、米国の成人の35%が「経済的に何とかやっている」と答え、お金が底をつくのではないかと心配している。ベネフィット関連のコンサルティング会社ファイナンシャル・フィネスによると、2021~2022年に実施した調査では、米国の従業員の80%が少なくとも「ある程度の経済的ストレス」を感じており、27%が「強いストレス」もしくは「圧倒的なストレス」を感じている。

 こうしたストレスは従業員の心身の健康を害するだけでなく、企業の収益にも致命的な影響を及ぼしかねない。TIAA(米教職員保険年金連合会)インスティテュートとグローバル金融リテラシー・エクセレンスセンター(GFLEC)が2023年に発表したリポートによると、従業員は週に平均8時間を金銭的な問題に費やしており、そのうち4時間は職場で発生している。

「従業員の経済的ストレスは大不況以降、最高の水準だ」と、ファイナンシャル・フィネス創業者兼CEOのリズ・デビッドソンは言う。雇用主が資金援助をするファイナンシャル・ウェルネス・プログラムは、単にあればよいというものではない。もはや「必須」である。

 もちろん、お金のストレスに対処する最初のステップは、従業員に適切な報酬を与えることである。さらに傑出した雇用主になりたいのであれば、行うべき最も効果的な福利厚生の一つは、筆者が「ファイナンシャル・ヘルス」(財務的健康)と呼ぶ基盤を整えることだ。

 研究によると、個人のファイナンシャル・ヘルスが良好な場合、つまり基本的な経済的ニーズが満たされており、経済的な選択や決断が自分の生活に与える影響が明確にわかっている場合は、全体的なウェルビーイングが高まり、職場で最良の自分を発揮できる。

 しかし残念ながら、2023年のトランスアメリカ・インスティテュートの報告書によると、労働者の77%がファイナンシャル・ウェルネスのプログラムを重要な福利厚生だと考えているにもかかわらず、それを提供している雇用主は28%にすぎない。これは大きな機会損失だ。

 本稿では、従業員のファイナンシャル・ヘルスを高めるために、すぐに実践できる3つのステップを紹介する。