企業幹部が引退する時に陥りがちな7つの落とし穴
Betsie Van Der Meer/Getty Images
サマリー:企業幹部を退いた後にどのような人生へ移行するかは、一人ひとり異なる。しかしその過程では、多くの人たちが驚くほどよく似た過ちを犯すことがわかった。本稿では、それらの典型的な過ちを企業幹部の引退における7... もっと見るつの落とし穴と呼び、こうした落とし穴を避けるための手法を紹介する。 閉じる

企業幹部が引退時に犯しやすい典型的な過ち

 IBMの会長とCEOを務めていたバージニア(ジニー)・ロメッティは、2020年夏、40年近く働いてきたIBMを退職するまで残り6カ月となっていた。そんな時、長くメンター役になってきた同社元CEOのルイス・ガースナーが会って話をしようと言ってきた。

「私の引退計画を心配してくれたのです。正直なところ、退職した後のことはまだまったく考えていませんでした。何しろ、会社の経営にすべての時間をそそいでいて、ほかのことを考える時間的余裕などなかったのです」と、ロメッティは筆者らに語っている。

 ロメッティは、ニューヨークにあるガースナーのオフィスを訪ねた。師との面談に手ぶらで臨みたくないと思い、退任後にやってみようかと思う活動の候補をリストアップしてみた。企業の取締役、投資会社の幹部、政府の仕事、そして書籍を執筆するのも悪くなさそうだ……。見ての通り、ありきたりな内容だった。こうした活動の候補を書き出したリストを手渡すと、ガースナーはそれに目を通し、その紙に何事か書き込んで返してよこした。

「要するに、私の引退計画は『不合格』だったようです」と、ロメッティは振り返る。「まったく違うアプローチで、こうした人生の段階に向き合ってみてはどうかと言われました」