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調整会議は業績評価にバイアスをかける
多くの企業で、業績評価サイクルの最終段階の一部として、評価の偏りを補正するキャリブレーション・ミーティング(調整会議)が行われている。通常、このプロセスでは、まずはじめに上司が直属の部下の評価フォームに記入し、一人ひとりに総合評価を下す。その後、上司は他の上司やシニアリーダーとともに調整会議に出席し、全社的に一貫した評価について議論し、補正を行う。つまり、従業員は最終的に2度、評価されることになる。1回目は上司による評価、2回目は調整会議による評価である。
調整プロセスの目的は、マネジャーに一貫した基準を課し、水面下で行われるえこひいきを減らして、バイアスを排除することだ。しかし、この手法が有効なのは、ある一つのタイプのバイアスに対してのみである。すなわち、調整会議によって軽減できるのは、寛大さのバイアス──マネジャーが部下のパフォーマンスを実態よりも高く評価するバイアス──だけであることが、研究によってわかっている。
しかし、上記の研究および筆者らが行ったデータ分析から、実はいくつかの形で、調整会議が業績評価のプロセスにバイアスをもたらしていることが明らかになった。
たとえば、調整会議は従業員を中間寄りにランクづける傾向を助長し、高パフォーマーと平均的パフォーマーと低パフォーマーの違いを見分けにくくしていることが上記の研究で判明した。これでは、平均的パフォーマーと低パフォーマーに対して改善に必要な重要なフィードバックを与えられない。さらに、従業員に「あなたは平凡だ」というやる気を削ぐメッセージを送ってしまう危険性もある。これでは理想的な状態とは言い難い。
もっとも、評価の調整によって助長されるバイアスはそれだけではない。最近、ある法律事務所の「コンセンサス評価」について筆者らが精査したところ、悲痛なメッセージが浮かび上がった。
「コンセンサス評価」は、法律事務所で一般的な取り組みであり、パートナーが一緒に仕事をした相手について評価を記入するものだが、評価される側のアソシエートはその中身を見ることはできない。代わりに、少人数のパートナーが評価フォームの内容に調整を加えたうえで「コンセンサス評価」を書き、それをアソシエートが受け取る。