AI戦略にDEIの視点を適切に組み込むにはどうすべきか
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サマリー:EYの調査によると、CEOの65%がAI(人工知能)が社会に役立つと考えているという。しかし、AIが不平等を悪化させないよう、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI)の観点を考慮した導入が必要である。... もっと見る本稿では、企業がAIシステム導入の際に自動化とDEIを効果的に両立させるために適用できる、3つの戦略を提示する。 閉じる

CEOの65%はAIが社会の役に立つと考えている

 マイクロソフト創業者のビル・ゲイツは、AI(人工知能)はインターネットと同じくらい革命的だと述べている。一方、AIは喧伝されすぎだと主張する人もいる。

 筆者の見るところ、AI全般、そして特に生成AIの可能性については、どれほど言葉を並べても言いすぎではない。AIは多くの点でゲームチェンジャーであり、あらゆる業界で企業のイノベーション、生産性と収益をより効果的に向上させるだろう。

 実際、多くのビジネスリーダーが筆者と同じ見解を持っている。2023年にEYが実施したCEOアウトルック・パルスサーベイでは、調査対象となったCEOの約3分の2(65%)が、このテクノロジーは社会のために役立つと答えている。

 とはいえ、もしAIが職場と社会全体に存在する不平等を悪化させる方向に作用すれば、善なる力にはなりえない。企業が自動化の能力を最大限に活用するつもりならば、このテクノロジーが必然的に生むであろう新たな職務とキャリア機会から誰が恩恵を受けるのかについて、慎重に考える必要がある。

 恩恵を受けるのは、過去にもこのような機会にアクセスできた同じ属性の人たちだけだろうか。もしそうであれば、歴史的に社会で疎外されているグループはどうなるのか。自動化によって彼らはさらなる不利を被るか、あるいは職場から完全に追放される可能性さえあるのではないだろうか。

 ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI)の推進に、筆者は大きな情熱をそそいでいる。EYでクライアントサービスのグローバルマネージングパートナーを務め、EYグローバルDEI運営委員会のメンバーでもある筆者は、バイアスと公平性について考えることに多くの時間を費やしている。AIシステムの導入においてDEIと自動化を両立させることは、「できれば望ましい」ものではなく、ビジネス上不可欠であると筆者は確信している。

 責任あるAIの開発と導入を徹底させるためのガイドライン、規制と倫理的枠組みを策定する取り組みは、世界中で行われている。組織と政府は、AIシステムにおけるバイアス、透明性、説明責任、公平正をめぐる問題に対処することの重要性について認識を強めている。

 したがって企業に求められているのは、社内でダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンが促進されるよう責任ある形で自動化を導入すると同時に、AIに伴うリスクを低減し、職場のイノベーション能力を最大限に引き出すためにこのテクノロジーを使うことである。

 本稿では、企業がAIシステム導入の際に自動化とDEIを効果的に両立させるために適用できる、3つの戦略を提示したい。これらの戦略は、業界のベストプラクティスと政府の取り組みを踏まえて、AIの倫理的枠組みをグローバル組織に導入してきた筆者自身の経験、およびテクノロジーとAIの開発におけるダイバーシティのメリットに関するEY独自の研究に基づくものである。