優れたリーダーはAIに取って代わられない
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サマリー:筆者らの調査によると、従業員は特定のリーダーシップ領域においては、AIを人間の上司より信頼している一方、依然として多くの従業員は人間に導かれることを望んでいることがわかった。これからのリーダーは、AIの利... もっと見る点を理解して活用しつつ、人間らしさを打ち出すことが重要である。そこで本稿では、優れたリーダーになるために参考になる、リーダーがAIを活用すべき時と人間性を最大限に発揮すべき時をまとめたマトリックスを紹介する。 閉じる

人はAIより、人に導かれることを望む

 膨大な情報にアクセスでき、処理能力が高く、学習スピードが速く、感情の制約を受けないAI(人工知能)は、リーダーシップに関わる多くの分野で、まもなく人間の能力を凌駕するだろう。筆者らが所属する企業、ポテンシャル・プロジェクトが複数の業種にわたる600人以上の従業員を対象に行った調査では、従業員はリーダーシップの特定の分野について、すでに人間の上司よりもAIを信頼していた。

 しかし、AIが多くの複雑な業務プロセスをマスターできるからといって、リーダーが取って代わられるリスクにさらされているわけではない。人間は、たとえ人間ゆえの欠点ややっかいさがついて回っても、人間に導かれることを望むものなのだ。

 これは、筆者らが過去10年にわたり、今日における効果的なリーダーとして成功するための要件を分析し、マッピングしてきた研究結果と一致する。つまり、人間味あふれるリーダーであればあるほど、チーム、企業、そして自分自身にとってよい結果をもたらすことがわかったのだ。今日、リーダーとして成功するには、AIの利点を理解し、活用する必要がある。それと同時に、自分の人間らしい部分を十分に打ち出す必要もある。

速く、正確で、偏見がなく、一貫性を持つ

 リーダーシップにAIを統合することに対する従業員の反応を調査するため、従業員にインタビューを行ったところ、あるグローバルコンサルティングファームの社員はこのように語った。「いままで働いてきた中で、私の得意分野を理解しようとせず、自分の昇進しか考えていないリーダーが何人もいました。AIボットのほうが、私を賢く、正しく、偏見なく育て、指導してくれたと思います」