企業が「デジタルノマドの増加」を商機につなげる方法
David Malan/Getty Images; Adobe Firefly
サマリー:リモートワークを活用して、世界中のさまざまな場所で旅しながら暮らす「デジタルノマド主義」が拡大している。デジタルノマド主義は、多額の長期ローンやモノに囲まれた生活から離れ、生活費の安い国で暮らしながら... もっと見る収入を最大化する道を可能にしてくれる。そのような状況下で、マーケターは顧客をどのようにとらえ直すべきだろうか。筆者らは、それを考える上で重要な、消費者行動を変貌させ、ブランドに多大なチャンスをもたらす主要なトレンドを3つ発見した。 閉じる

ブランドはノマド的なライフスタイルを理解すべき

 デジタルノマド主義とは、リモートワークを活用して、世界中のさまざまな場所(多くの場合、手頃な価格で生活できる地域)を旅しながら暮らすライフスタイルのことだ。そうした選択をする人は着実に増加しており、テクノロジーに強い人だけでなく、子どものいる家族から退職者まで、あらゆる人々を魅了している。ある調査では、自分をデジタルノマドだと考える米国人は2019年から131%増の1700万人以上に上り、職業も幅広い。新型コロナウイルスのパンデミックを経て、多くの国でデジタルノマドビザの取得が容易になったことも、この流れに拍車をかけている。

 もっとも、このトレンドの影響は、ポストパンデミック時代の場所の柔軟性やリモートワークの広がりだけに留まらない。先進国では、前の世代が手に入れた「よい生活」の魅力に幻滅した人々の間で、文化的なシフトが起こりつつある。

 環境が危機に瀕し、仕事をめぐる競争と不安定さが加速し、住居費、教育費、生活費の増加が続く中、持ち家や9時~5時の仕事といった安定の象徴を、もはや実現可能なものだとも、望ましいものだとも感じていない人が大勢いる。デジタルノマド主義は、多額の長期ローンやモノに囲まれた生活から離れ、生活費の安い国で暮らしながら収入を最大化する道を可能にしてくれる。

 企業がデジタルノマドに適応する必要性については数々の指摘がなされてきたが、デジタルノマドがブランドや消費者に与える影響について、十分に理解されているとは言いがたい。デジタルノマドの大半は欧米出身だが、このライフスタイルの拡大は世界中の市場に影響を及ぼしている。リモートワーカーの流入に対応するために、各地の地域経済に変容が起きるためだ。

 筆者らは、デジタルノマド主義がグローバル市場に与える影響について調査してきた。この調査により、各ブランドが価値を保ち続けるためには、ノマド的なライフスタイルを理解し、それに適応する必要があることが示唆された。

 筆者らは、消費者行動を変貌させ、ブランドに多大なチャンスをもたらす主要なトレンドを3つ発見した。すなわち、特定の場所に根づく志向の終焉と柔軟さの必要性、ノマド生活に対応した新たなインフラとサービスの必要性、そして新たな価値観やライフスタイルについての言説を形成できる可能性である。