不確実な時代こそ、コラボレーションが不可欠である
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サマリー:経済状況が不透明な中で、難題に直面し、それに対処するリソースが限られてしまうと、多くのリーダーはリスク回避に走り、保守的な文化を醸成し、安定を優先する傾向に陥る。しかし、こうした困難な時期こそ、コラボ... もっと見るレーションを通じて大きな変革をもたらすべきである。本稿では、リーダーが協働的なマインドセットを持ち、行動を変えるための4つの戦略を紹介する。 閉じる

先行き不透明だと、意欲あるリーダーも後ろ向きに

 筆者らのクライアントで、テクノロジー業界の上級管理職のメアリー(仮名)は、経済が不透明な中、大規模な組織を経営するうえでさまざまな難題に直面していた。彼女の会社も業界も厳しい状況にあり、予算削減や雇用凍結を実施していた。さらにメアリーは、自分が直接コントロールできない事業部門の業績不振を補うために、年間売上目標を上回ることを課せられていた。

 こうした困難が降りかかる前のメアリーは、収益を上げるためのコラボレーションや柔軟性、新しい試みに対するオープンな姿勢で知られていた。しかし、新たなプレッシャーを経験するにつれ、彼女の考え方は変化した。ビジネス上の課題が山積し、それに対処するためのリソースが乏しい中で、本能的に後ろ向きになり、保身に走るようになったのだ。

 苦闘しているのは、メアリーだけではない。コロナ禍とそれに続く経済不安の中、マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査では、新たな成長機会の獲得に自信を示した経営幹部はわずか21%だった。この数字が示唆しているのは、リソースが限られてくると、多くのビジネスリーダーがリスク回避に走り、みずからの利益を守ろうとし、保守的な文化を醸成し、イノベーションよりも安定を優先する傾向があるということだ。こうした状況では、既存の資産を守り、支出を減らし、現状を維持することに重点が置かれがちになる。そうなると、組織が競争環境において適応し、ピボットし、繁栄する力は損なわれかねない。しかし、困難な時期にこそ、コラボレーションという未開拓の可能性が大きな変革をもたらすのだ。

 筆者らはエグゼクティブコーチとして、また高業績のエグゼクティブとそのチームを支援するコンサルタントとして、こうした状況を頻繁に目の当たりにしてきた。成功し、成長意欲もあり、通常であればリスクテイカーでもあるリーダーでさえ、先行きの不透明な時期には後ろ向きになり、協働的で革新的な仕事の進め方から遠ざかってしまう。もしあなたもリーダーとして思い切ったリスクを取れずにいるのなら、以下の4つの戦略が役に立つはずだ。マインドセットと行動を変えることで、より協働的になり、成長を引き出せるだろう。

欠乏の意味を再定義する

 コラボレーションの可能性を実現するうえで最大の障害となるのは、いわゆる「欠乏マインドセット」である。これは、2017年に貧困が認知機能を阻害するという仮説を検証していた研究者らが使用した用語だ。欠乏、すなわち必要なリソースが不足した状態になると、人は目先の問題にのみ精神的エネルギーをそそぐようになる。