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空間コンピューティングにおける試金石
アップルビジョンプロ(Apple Vision Pro、以降「ビジョンプロ」)が先頃米国で発売され、大きな歓迎と懐疑の入り混じった反応を呼んでいる。価格3500ドルのアップル新デバイスの登場に、懐疑派からは「誰のための製品なのか」「何の役に立つのか」といった疑問が寄せられている。
なぜ大きく注目されているのかを理解するには、背景を知ることが重要だ。このヘッドセットは、空間コンピューティングと呼ばれる新しい技術分野における現時点での最大の試金石だと見る人が多くおり、支持者らはこの技術がコンピューティングを新時代に導くことができると信じている。
ビジネスリーダーが注目すべきは、ビジョンプロというデバイスそのものではなく、付随する空間コンピューティングの機能と、それが自社の事業や製品に今後もたらしうる可能性である。
空間コンピューティングは、AI(人工知能)、コンピュータビジョン、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)やその他の技術を用いて、物理環境での人間の体験に仮想体験を溶け込ませ、3次元で機能するコンピューティング形態を創出する。
ソフトウェア、ハードウェア、データ、接続性の進化に後押しされる空間コンピューティングによって、人々は他者との交流やテクノロジーとの接触を新たな方法で行うことができ、機械は私たちの物理環境をナビゲートする新たな機能を備えることができる。
物理環境でのユーザーの体験に仮想レイヤーを加えることで、デバイスで処理された映像、音、加速がリアルタイムでの知覚を助ける。私たちの眼球がマウスになり、ジェスチャーがクリックになる。
ビジネスの観点から見れば、この技術はコンピューティングを人間が見えるもの、触れるもの、認識できるもののすべてに拡張する可能性を秘めており、スマートフォン時代の始まりに起きたような変化を期待させるものである。
これは企業にとって何を意味するのか。そして、この新たなフロンティアに企業はどう取り組もうとしているのだろうか。アップル新製品やほかの空間コンピューティング機器をいち早く導入した企業は、その可能性と実効性や課題について、何らかのヒントを示してくれる。ビジョンプロを動かすオペレーティングシステムであるビジョンOSのネイティブアプリの開発に取り組む企業は、すでに重要な学びを得ている。
どの企業が早期導入し、何を学んだのか
ビジョンプロが発売された2月2日、大手ホームセンターのロウズや、化粧品メーカーのエルフ・コスメティックスなどがネイティブアプリをリリースした。ほかにもファッションブランドのハニファなどが新たな顧客体験の創出に着手している。空間コンピューティングがビジネス、顧客サービス、エンタテインメント、仕事の進化のあり方をどう変えうるのかを、これらのビジョンOSネイティブアプリから垣間見ることができる。